第47話
いつもの自室で目が覚める。いつもと変わらない時間、少しだけ気怠い体を何とか起き上げようとするが力が湧いてこない。最近は何時もこうだ、心が重く、体に力が入らない。
「なんで毎度毎度ォ……! アンタが先生の布団に入ってるんですかねぇ……!」
「おいおいィ……! 男の子の朝は多感なんだよォ……! オレが直々に整えてやろうとしてるんだろォ……!」
これも俺の体が重い原因の一つでもあるだろう。見上げている天井を背景に、目の前ではレオナとダンタリオンが手を組んで争っている。ここ最近では大して珍しくも無い光景に、最近恒例となった溜息が漏れ出る。
「不健全ですよ……! 先生の同意はあるんですか……! 可愛い弟子の添い寝を求めているって理解できないんでですかァ……!」
「馬鹿だね君はァ……! 万国共通、オスはメスのデカいおっぱいが大好きなんだよ……! 君の貧相な胸が隣に並んだ所で、ザインが喜ぶ訳無いだろォ……!?」
「んだとテメェ……!! ちょっと家にお金入れて、時々家事を手伝ってるからって調子に乗んじゃねぇぞコラァ……! こちとら成長期真っ盛りなんですけどォ……!?」
「ふふっ、メスとしても経済力としても敗北した気分はどうだァ……! 君がその慎ましい谷を成長させている最中に、オレはザインを篭絡するがなァ……! アーハッハッハッ! ダンタリオンちゃん大勝利っ!!」
猫が鉤爪で引っ掻き合う様にして、レオナとダンタリオンが俺の腹の上で暴れ狂う。精神的にも、そして肉体的にも体が起き上がらない。
「こんのォッ……!」
「――――ほぅぃっ!?」
ゴリュ。下腹部の方で何か、してはいけない音がした。男が何よりも大切に保護すべき大切な物。男を男たらしめる存在感が遠く彼方へ消え去ってしまう錯覚に陥り、脳味噌をハンマーで殴り付けられた衝撃が何十倍にもなって襲ってくる。
「あっ……」
「やっば……」
「やるのなら……別の場所でやってくれ……」
起床して一分未満で俺の意識は深い暗闇の底へと墜ちる事になる。ああ、俺は女の子になってしまうのだろうか。痛覚が消え去り、性別の境界線を跨がない様に、ギリギリの所で保ちながら意識が遠のく。
「くはっ、コレがホントの腹上死ってか」
「言ってる場合ですか! せ、先生っ! しっかりして下さいっ! せんせーーっ!!」
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