第286話 反省

リリス私の影の中へ消え、静寂の落ちる寝室。

アレンも険しい顔のまま、何かを考え込んでしまっている。



「・・力がいるわね。」



魔王だろうと、私の大切な家族を守る為に。

そして、皆んなの強化も必須。



「モルベルト国の迷宮に入りつつ、レベル上げ。後は皆んな用に護身用に魔道具作成かしら?」



これからの予定を立てていく。

やる事は多い。

が、皆んなの安全には変えられないもの。



「ふう、またしばらくアレンには会えなさそうね。」



溜息を落とす。



「アレンに会えなくなるのは、とても寂しいわ。」

「・・ディア様。」



アレンの顔に、歓喜の色が広がる。



「僕もディア様の為に、もっとレベル上げを頑張ります。」

「えぇ、期待しているわ、アレン。」

「・・怪我、しないで下さいね?」

「アレンも。」



心配そうなアレンの頬に口付けた。

名残惜しく思いながら、アレンとのしばしのお別れ。

暇を見つけては、アレンに会いに来よう。

ルーベルン国の屋敷へと転移する。



「さて、作りますか。」



勇者召喚の報告を聞いた私達は、すぐさま動き始めた。

まずは、レベル上げ。

次に、身を守る為に必要になる護身用の魔道具作成。

主な魔道具は、これ。



帰還の首飾り

レア度:秘宝アーティファクト

機能:破壊不可、所有者制限



製作者:ディアレンシア・ソウル




身代わりのブレスレット

レア度:秘宝アーティファクト

機能:破壊不可、所有者制限



製作者:ディアレンシア・ソウル




結界のアンクレット

レア度:秘宝アーティファクト

機能:破壊不可、所有者制限



製作者:ディアレンシア・ソウル



の3点。

この3点を優先的に、私の家族である全員分を製作した。




身代わりのブレスレット

・一度だけ即死ダメージを肩代わりさせる。




結界のアンクレット

・壊れるまで強力な結界を張り続ける。



身代わりのブレスレットと結界のアンクレットの2つは、私の精神衛生上、魔族との戦いに必要不可欠だろう。

身代わりのブレスレットで即死を回避しつつ、結界を張りながら帰還の首飾りで私の元へ転移させる。

最高のコンボと言えるだろう。



「はぁ、それにしても、大量の魔道具作りは疲れたわ。」



皆んなの分の魔道具作りは、結構キツかった。

が、後悔したくはなかったから、何とか頑張ったんだけどね。

ルミアとルルキの姉弟にも協力してもらったし。

ソファーの寄りかかり、溜息を1つ。

そんな私に差し出されるカップ。



「ーーディア様、魔道具作りお疲れ様でした。今は、ゆっくりとお寛ぎください。」



私にカップを差し出しているのは、アディライト。

中には、温かな紅茶が入っている。



「ありがとう、アディライト。ちょうど何か飲み物を飲みたいと思っていたの。」



さすが、有能なメイド。

気がきくね。



「恐縮です、ディア様。」



私の賛辞に嬉しそうに一礼するアディライト。



「ですが、ディア様?このまま少し休まれてはいかがですか?」

「んー、そう、ね。皆んなに渡す魔道具作りもひと段落ついたし、少し休もうかな?」



頷き、カップに口を付ける。

リリスによると、勇者召喚はまだ行われていない様子。

魔族の大きな動きもない。



「動きすぎで皆んなにも、心配させてるし。」



ちらりとアディライトに視線を向ける。

私に休んで欲しいと思っている皆んなの気持ちは知っていた。

が、私にも譲れないものがある。



「私は世界がどうなろうとも、どうでも良いわ。でも、皆んなに降りかかるであろう厄災だけは、どうしても形容できないの。」



こらは、私の我儘。



「それは、私達も同じ気持ちですわ、ディア様。」



そっと、アディライトの手が、カップを持つ私の手ごと包み込む。



「アディライト?」

「この世界より、ディア様、貴方の方が何より私達は大切なのです。」



だから、無理なしないでと。

心配げに目尻を下げるアディライトが語っていた。



「うん、心配かけて、ごめんね?」



反省。

もう少し、効率よく行動していかなきゃ。

自分の至らなさを知る。

私もまだまだだ。



「ディア様、私達も反省したのです。」

「え?反省?」

「はい、ディア様の負担が大きい事に。」



アディライトの瞳が煌めく。



「私達に中にもっと、ディア様のお力になれるよう、一同、出来ることを増やそうと思っております。」

「そうなの?」

「はい、戦力の増加も急務ですが、魔道具作り、ポーション類の精製、その他も早急に人材を育成しておりますので、もう少しお待ちください。」

「へぇ、そうなんだ?」

「うふふ、皆のレベルも高いので、なんの苦でもありませんわ。すぐにでも、ディア様のご期待に添える力を身につけさせますので、ご安心を。」



笑顔でアディライトは言い切った。

・・マジですか?

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