第228話 過大な戦力

どうやら、この兄妹は思考も同じみたい。

2人に共通するのは、私の事。

当然のように、私の事にしか興味がないと言わんばかりの2人に苦笑いするしかない。



「どうやらユリーファは、ディア様に憧れているようなのです。」

「私に?」



視線を向ければ、恥ずかしそうに頬を染めて恥じらうユリーファ。



「その、とても烏滸がましい事なのですが、ディアレンシア様は、私の理想の女性であり、目指す指針なのですわ。」

「ーーありがとう。」



照れる。

こうやって面の向かって褒められるのは、いつまで経っても慣れないものだ。

背中がむずむずしてしまう。



「ですから、ディアレンシア様。必ず、また来て下さいね?」

「約束するわ、ユリーファ。」



こうも慕ってくれるユリーファと約束を交わし、私達はこの里から離れる準備を進める事にする。

ルーベルン国へ私達が戻ったのは、ユリーファに帰る旨を告げた5日後の事だった。



「「「お帰りなさいませ、ディア様!」」」



全員総出での盛大なお出迎え。

圧巻である。

私の帰還に一様に嬉しそうな表情の皆んなに頬が緩む。



「ただいま、皆んな。」



元気な様子の皆んなに、笑顔を返す。

ちょくちょく転移を使って、この屋敷へ帰って来ていたから、皆んなが元気な事は知ってはいたけどね?



「皆んな、変わりない?」

「特にディア様にご報告するような事は、ございません。ご安心を。」



ロッテマリーが笑みを浮かべる。

その横で、ルルーシェルが涙を浮かべているのは、気のせいかい?

目の錯覚かしら?



「そう?ロッテマリー、皆んなも、私達がいない間の留守番、ご苦労様。」

「ディア様も、迷宮攻略もされて、大変お疲れでしょう。どうぞ、お部屋でお身体をお休ませ下さい。」

「ありがとう、ロッテマリー。」



ロッテマリーに促され、屋敷の中へ入った私は、自室へと向かう。

自室は綺麗に掃除されており、清潔のまま。

自室のソファーへ腰掛け、息を吐く。



「少し疲れた、かな?」



行きのほとんどが馬車移動だったとは言え、色々な事があったしね。

帰りは転移で街の近くまで一瞬で戻り、門まで馬車に乗ったとは言え、疲れが蓄積している事は間違いがない。



「ディア様、疲れが取れるお茶です。」



私の目の前に、アディライトがすかさずお茶を入れたカップを置く。

よく出来た子である。



「ありがとう、アディライト。でも、アディライト達も疲れたでしょう?私のことは気にせず、アディライト達も自室で休んで良いんだよ?」



当たり前の様に私の自室へ集まる、いつもの皆んな。

それに、ロッテマリーとルルーシェルの2人も部屋の隅に控えている。



「大丈夫ですわ、ディア様。私達は、ディア様のお側にいれば、疲れなど吹き飛びますから。」



アディライトが良い笑顔で微笑む。

・・・うん、それは無理だと思うよ、アディライト。

他の皆んなも、なんでか頷いてるし。



「・・まぁ、皆んなが平気だって言うなら、良いの、かな?」



釈然とは、しないけど。



「無理だと思ったら、必ず休む事。約束だからね?」



釘を刺しておく。

そうでなかったら、無理してでも私の世話を焼きそうだもの。

過保護なのも困ったものだ。



「それで、ロッテマリー、ルルーシェル、私達がいない間の、皆んなの迷宮攻略の状況はどうなってる?」



だいぶ進んだかな?



「はい、ディア様。数名のグループがルーベルン国の迷宮攻略をすでに終えております。」

「・・はい?」



数名のグループが迷宮攻略を、すでに終えている?

目を見開く。



「えっ、それ本当に!?」

「左様です、ディア様。」



驚く私に、ロッテマリーとルルーシェルの2人が当然とばかりに笑顔で頷く。

アディライト達も驚いたのか、その目を見開いている。



「ロッテマリー、それ、報告する事だよ!?大事な事だよね!?」

「・・?ディア様の配下として、これぐらい当たり前の事だと思いますが?」

「・・はい?」


不思議そう表情のロッテマリーに言葉を失う。

・・・なん、ですと?



「ディア様のお側に侍り、配下と名乗るのであれば、これぐらいの事は出来て当然です。」



自分の事のように胸を張る、ロッテマリー。



「まぁ、確かに。」

「一理ありますね。」

「ロッテマリー、良く分かっている事。」

「「納得なの!」」



コクヨウ、ディオン、アディライト、フィリア、フィリオの順でロッテマリーの言葉に同意する。

ルルーシェルも当然とばかりに微笑んでいるだけだし。



「ーーはぁ、ロッテマリー、ルルーシェル、あった事の全てを報告して。」

「「かしこまりました、ディア様。」」



一礼した2人に、ひっそりと溜息を落とす。

・・この屋敷、最強レベルの戦力達で溢れていないか?



「・・・良い事、よね?」


うん、そうだ。

そうに決まっている。

私は1人、自分自身に言い聞かせた。

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