第175話 王妃様の登場
今夜の為にロッテマリーに習ったダンス、皆様へ見せ付けなくちゃ、ね?
手を取ったコクヨウと寄り添う。
「ディア様、コクヨウの次は私とも一緒に踊って下さいね?」
「もちろん。ディオン、私達が踊っていり間はアディライトの事、よろしくね?」
「お任せください。」
「楽しんで来てください、ディア様。」
「ありがとう。」
ディオンへ頷きアディライトの事を任せてコクヨウに手を引かれるままホールの方へと歩き出す。
コクヨウと手を取り合い、流れ出す音楽に乗ってゆっくりと踊り出した。
「あら、素敵ね。」
「衣装の色はあれだが、ああして2人が並ぶと1枚の名画の様ではないか。」
「お似合いの2人だわ。」
私達に対して、あちこちで上がる感嘆の声。
「ふふ、なんだか私達の事を褒められてるよ、コクヨウ。」
「ようやくディア様の素晴らしさを理解したのですね。嬉しいですが、ディア様の素晴らしさの全てを知るのは僕達だけですよ。」
「もう、コクヨウったら。」
コクヨウと囁き微笑み合い、楽しくステップを踏む。
踊りやすくて時間を忘れてしまいそう。
私達が踊っている間、アディライトとディオンの2人もダンスを楽しんでいる様だ。
「そろそろ、この曲も終わりそうですね。」
「名残惜しいけど、コクヨウ、とても楽しかった。ありがとう。」
「こちらこそ、こうしてディア様と踊れて楽しかったですよ。しかし、もう少しディア様の事を独占したくなりますね。」
「っっ、」
甘いコクヨウの眼差しに頬が染まる。
心臓に悪い。
そのまま一曲終わって、次はディオンと踊り始める。
「こんなに綺麗なディア様と踊れるなんて私は幸せ者ですね。まるで夢の様ですよ。」
私へ甘い眼差しを浮かべるディオンとステップを踏みながら、手に口付けを受ける事に。
「ディオン、皆んなに見られてるわよ?」
「見せているのです。ディア様が私達のものだと。」
上機嫌にディオンが笑う。
「まぁ、綺麗。」
「ふむ、こちらも名画として残したいな。」
「まるで比翼ね。」
こちらでも、周囲から称賛される。
掴みは上々だ。
「この会場で今日1番の注目を集めているのはディア様ですね。」
「それを狙っているのだもの。」
ディオンと寄り添い音楽に合わせて踊りながら、周囲へ目を走らせる。
私達への不穏な視線の確認。
「んー、今の所、私達へ害になりそうな悪意ある視線はないようよ。」
「ディア様が普通の冒険者ではないと聡い者は悟っているのでしょう。教養に実力、その全てをディア様は備えていますから。」
「ふふ、聡くなければ貴族としてやって行けないものね。自分達の利益になると分かって私への見方を変えたのでしょう。」
王ミハエル様が私を重用している事。
魔族を私達が倒し、最速でSランク冒険者となった事を知る者達は理解したのだろう。
私達の利用性を。
「私と同じ様に今回Sランクになった皆んなは私の命がなければ動かない。なら、皆んなの事を動かせる私の機嫌を損ねるのは愚策と考えたのでしょうね。」
有益な存在と知れば、多少の事には目を瞑る。
そして、虎視眈々と自分達が有利になる様に私達を利用しようと企むだろう。
「まぁ、簡単に利用されてなんかあげないけど。」
私が動くのは、皆んなの為。
それ以外は、私にとってどうでも良い存在。
私達を厄介ごとに巻き込まないのなら、好きにしてくれと言う気持ちだ。
「全てはディア様のお心のままに。」
私の好きにして良いのだと。
望んだ事を自分達は叶えるのだと、ディオンは甘く私へ微笑んだ。
「今日のミッションは取り敢えず成功かな?」
コクヨウとディオンの2人と踊り、たくさんの注目を集めた私達。
王ミハエル様からSランク冒険者となった私達の紹介をきちんとしてもらったよ?
これで、私達に必要以上に絡むようなおバカさん達が現れない事を願う。
「こんばんは、ディアさん。今日は貴方達に迷惑をかけたわね?」
「これは、王妃陛下。」
王妃陛下の登場に私達は頭を下げる。
うん、礼儀です。
この国の王妃様へ敬意を示す。
いちいち面倒だけど、このやり取りは必要な事。
無知だと言われたくないからね。
「頭を上げて?ディアさんも、コクヨウさんも、ディオンさんも、アディライトさんもね?」
「はい、王妃陛下。」
「「「はっ、ありがとうございます、王妃陛下。」」」
王妃様からの許可を得て私達は頭を上げた。
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