幕間_Ⅰ
「(エ、エイルちゃンあれ、ダイジョーブなンだろォネ?)」
「(わ、分かりませんよなんか急に顔面蒼白になって! あれかな? 吐きに行ったのかな?)」
「(ンな顔じゃねェとアタシァ思うがね……)。あ、ニーサン注文。日本酒置いてるゥ?」
エイル不在の居酒屋にて。
彼女ら、桜田ユイとレオリア・ストラトスは、いないエイルを気遣ったようなひそひそ声で状況文政期に勤しんでいた。
「(しかしなンかあれだよなァ、よく
「(一応これまでの旅路を共にした仲らしいですからね。ありえない話じゃない)」
「(っかーなんだいアイツァ! やっぱりロリコンだったんじゃァねェかい!)」
「(いやーエイルさんはロリじゃないでしょー。一応この世界じゃ成人済みですよ?)」
「(アタシとの旅路でもちょっとあったんだヨその手のクダリ! 詳しくァ死んでも言わねぇがな。…………なァなァセンセー? これちなみにどっちだと思ゥ?)」
「(どっちって?)」
「(ハルから彼女に手ェ出しやがったンかネ?)」
「っぶー!(ビールを吐き出しつつ)」
「ばっきゃろう声が大きいワ! ひそひそしろォひそひそォ!」
「……いや、っていうか声潜める必要なくないです? エイルさんいないし」
「わォお確かに。……あーどーも店員さん。おーこりゃ確かに日本酒だ。いただくゼ。って、おン? 小皿ォ置いて、グラスァ置いたァ、小皿の上に? ……おっと待てヨ? 待て待て待て待ていやまさか、まさかそんなはずァねェと見るが
「零しにそれだけ盛り上がってくれたら冥利に尽きますね……。あ、どもども。私はグラスで結構です」
「なんだいそっちァ景気の悪ィ。零すか零さねェかなら零すべきだろ日本酒ァヨ」
「アンタは服の裾に酒零してんだよ気付いてないでしょ」
「どォりでしゃっけェ! わォわォエッチに濡れちゃったっ」
「ガキの粗相にしか見えませんね」
「表に出ろォ!!」
「……すいませんガチの怒声は流石に止してください公共の場で」
「こりゃ失敬。いや違うワ、失敬したのァ手前だな? 詫びにヨ、ここァ奢れヨ」
「元々その予定でしたけど了解です。勢い余って地下牢での秘密の打ち合わせ内容まで全部抜けてるとかあったら許しませんからね?」
「……そうだった。今日ァ高ェ酒飲まねェといけねンだったい」
ともかく酒だ、とユイがグラスを慎重に手元に引きずる。
そのまま肩を寄せるようにグラスの縁へと唇を近づけて、すするように一口。
「――ふふン。酒の味ァウチのが上じゃねえかい?」
「酒蔵はみんなそう言うんですよ。しかしあんた、てっきり奢りの約束覚えててエイルさん誘ったのかと思いましたよ」
「ンなみみっちい真似するかい。ここァやっぱアタシが出すからよ、センセーァ次で奢れ」
「……これも忘れてるっぽいですけど、明日は悪神神殿防衛拠点の現地視察に入りますからね? 私もアンタもエイルさんも、今夜はこの店でおしまいですよ」
「はン? つれねェなァ。ンまァアタシを止めたきゃ張り倒して止めンだね。アタシァ飲むぞ」
「……切実な話、そのナリで店に入れますかね一人で」
「何のための暴力だヨ」
「最低だなぁ」
と、そこで、
「お騒がせいたしました……」
「おォエイルちゃン、具合悪かったァ?」
「いえ。むしろ腑に落ちたってことで今日は飲みます」
「(腑に落ちた? 何が?)」
「(ゲボが? 喉を逆流して無事に戻ってったのかな?)」
「さあ飲むぞい! 飲むぞい飲むぞい! ありゃりゃグラスが空っぽぞい!」
「あー、悪ィね。(水割りホッピーの)味が気になって頂いちまったヨ」
「いえいえ構いませんとも! その代わりユイさんのソレ一口頂いちゃっても構いませんか!?」
「ゥえ? いやちょ待っ――」
「貰い! わあ透明! 甘い香り! いただきます!(ぐびぐびッ)」
「……あァあァあァあァ。見ろィ、あんなに飲んじゃったヨ」
「おいしい! なんてお酒ですか!?」
「日本酒って言います。ご存じないかもしれませんがビールと同じノリで飲むお酒ではないのです。ぶっちゃけ大丈夫ですか?」
「……………………世界がぐりゅぐりゅすりゅぅ(ばたんきゅう)」
「わァお」
「え、エイルさん!? ちょっとちょっと!?(ほっぺぱしぱし)」
「………………………………。ぐぅ、すか、ぴぃ」
「……、……」
「……、……」
「…………、…………」
「…………、…………」
「…………、こりゃヨ、センセー?」
「……まあ、今日は解散ですかね」
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