第26話また、一枚面白い写真が撮れた

「あらら、倒れるほどビンタ強かった?ごめんね」


「な、何をするの!わたくしにこんなことをしてタダで済むと思っているの!?お父様に言いつけてやるんだから!お父様は国王様に信頼されている伯爵で―」


私はうるさい喚き声を一切無視し、倒れた令嬢の上にドカッと馬乗りになった。


「ひっ!?」


令嬢は喚くのをやめ、小さな悲鳴を上げる。

他の令嬢たちはどうしたらいいかわからず、恐怖に引きつった顔で互いに顔を見合わせている。

皆、何意外そうな顔しているの?私はてっきり、喧嘩を買ってください又はどうぞ殴ってくださいって遠回しに言っているんだと思っていたわ。


だから、お望み通り殴ってあげたんだよ。

これが私なりの敬意の払い方。


「私はね、別にお貴族様特有の差別意識にあーだこーだ言うつもりはないよ。でも言いたいことは一つだけある」


人の人生を左右するほどの権力と財力を持っている人間が身内にいると、それをフルに使い、好き勝手したくなる気持ちは理解できなくもない。気に入らない奴を社会的に排除するのはとても気分が良いから。実際、してきたことだからわかる。


だけど、一つだけあんたらに言いたい。

私は令嬢の胸倉を掴み、息がかかるくらいに引き寄せた。令嬢の目元には恐怖で今にも零れそうな涙が溜まっている。


「あ………あ、あ………」


「喧嘩を売る相手は選びな」


私はこれでもかというほど声にドスを利かせた。


ああ、気分悪い。ああ、最悪だ。

ハズレのギトギトラーメン食べた時みたいな、ひどい胸やけだ。

人を気分悪くさせたんだからその倍やり返されても文句は言えないってことを教えてあげるよ。


私は令嬢の胸倉をパッと放し、今度はドレスの宝石が散りばめられたスカート部分を鷲掴んだ。

令嬢はギョッとした顔で私が鷲掴んでいる手を凝視する。


「な、何を」


「ねぇ、このふわふわドレスの裏ってどうなってんの?」


私はにやりとした笑みを浮かべ、がばっとスカートをめくった。


「「「ひいい!!??」」」


おお、悲鳴のハモりって初めてかも。


「ふぅん、ドレスのスカートの中ってこんななんだ。初めて見た」


私はちらりと視線を上に向けた。

皆、面白いほど顔を青くしている。特に青いのは私が現在、馬乗りにしている令嬢だった。

さっきまで人を見下してあざ笑っていた顔が、今やおぞましいモンスターを目の当たりにしているかのような引きつった顔をしているのだから、面白い。


「はっ」


私はそれが愉快でたまらなかった。さっきまでの胸焼けが薄らいでくるようだ。

思わず、顔がにやけてしまう。


「ねぇ、想像しなかった?あんたが見た野蛮の猿の姉が実は妹以上の野蛮さを持ってるって」


私は右手の掌を握ったり開いたりという動作をこれ見よがしに見せつけ、スカートの中に手をつっこんだ。


「な、何を!?」


「野蛮だから野蛮な性欲を持ってるって想像しなかった?性欲抱いた相手が男だろうが女だろうが関係のなく盛ってしまうような猿だって」


「ひっ!?いや、いやぁぁ!!!」


どん。


「おっと」


一気に恐怖の感情が爆発したのか、令嬢はわっと泣き出しながら私を思いっきり突き飛ばした。突き飛ばされて私がよろけると令嬢は立ち上がり、走り去っていった。他の令嬢達もそれに続くように脱兎の如くその場から逃げていった。


「お~い、忘れ物だよ………って聞こえてないか」


忘れ物というのはあの一瞬で抜き取ってやった令嬢のパンツだった。

あの様子じゃノーパンだってことに気づいてないだろうな。それにしても、こんなに面白いほどうまく抜き取れるなんてね。女子のパンツを本人に気づかれずに抜き取るなんて真似、今まで2回しか経験ないから、上手くいくかわからなかった。


でも、上手くいった。すごいな、私。スリの才能とかあるんじゃない?日本に還ったら今度はお財布を対象として1回試しにやってみよっかな。


う~ん、でもあの令嬢のパンツって紐パンだったんだよね。


私は白い刺繍が入った高級感漂うパンツを軽く掲げた。


よく考えてみたら、紐パンだから簡単に抜き取れたんだと思う。前の2回は今回のように簡単ではなく、ちょっと手こずった感があったから。


ていうか、パンツと財布って違うか。

そもそも、私別にお金に困ってないし。


それにしてもあの令嬢達、私が本当に言った通りのことをすると思っていたのかな。

失礼だね、そんな酷いことしないって。


ただパンツ抜き取って女のアソコにバラを5個ほどねじり込もうかなって思っていたくらいだった。私ってちょっと優しくなったかも。あんな胸やけがするようなことを言われたのに、それくらいのことで勘弁してあげようと思っていたんだから。


「あの令嬢、自分がノーパンだって気づいた時どんな顔するかな?」


きっと私の想像以上に面白い反応をするに違いない。

その瞬間の顔、撮りたいなぁ。

でも、撮れないんだろうなぁ。

撮れないんだよね。撮れないことが悔やまれて仕方がない。


「仕方がない、これで我慢するとするか」


私はバラをバックに令嬢のパンツを持ったままピースをして自撮りした。

撮った写真を確認する。


たくさんのバラ、高級そうな紐パン、制服を着た女子高生。

うん、こうして見るとなかなかシュールで面白い写真だ。


また、一枚面白い写真が撮れた。


「そういえば、大司教の様子って今どんな感じなのかな。もう、3、4枚撮った後、神官達にその後の経過でも聞きにいこうかな」


私は抜き取ったパンツをスカートのポケットに入れ、再び庭園の毛氈花壇にスマホを向けた。

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