サキュバス、諸行無常の響きを奏でました12
グッモーニン!
実に清々しい朝! 気分がいいぜ! やはり早寝早起きはするもんだな! それに見てみろよこの紺色の空をさぁ! 太陽が昇る前特有の瑞々しさが醸し出てる! なんてったって今の時刻五時半! 早朝! THE! 早朝! 窓をオープンして息を吸い込めば夜の残り香が鼻腔をくすぐるぜ畜生!
馬鹿か。
早起きなんかしても一文の得にもなんねーよ。なんだよこれ? 俺はおじいちゃんか? それともゴルフに向かう中年かって。もうなんなん? いい加減にしてくれよマジで。
あぁ、休みの日に昼前まで寝るのが好きなのに、なんだこの無駄な健康ホリデーは。それもこれも全部昨日夕食を食べ損ねたからだ。あの後結局クソ怠くなって胃が空のまま就寝したから内臓ダメージが完全回復して身体が無駄に元気勇気ポンキッキーズなんだよ。なんだこの無駄な体力。どうやって発散せいっちゅうねん。ハイキングにでもいくか?
ゴゴゴゴゴゴゴ……
……まずは食事だな。
空腹過ぎて胃がジョジョの擬音みたいな音を立てている。さすがになんか食べたい。 よし、作るか。夕食はどの食材をつかっていいのか分からなかったが朝なら簡単。卵にベーコン OR ウィンナー。豆腐にお揚げに納豆。こんだけあればご機嫌な朝食が完成ってもんだ。よーしなんならゴス美の分も合わせて作るぞぉ。
ゴス美か。
あいつ大丈夫かな。昨日アホみたいに飲んでぶっ倒れたけど。
いや、ゴス美の事だ。もしかしたら朝食の準備をしているかもしれん。が、一応念のため部屋を覗いてみるか。
扉を開け自室を飛び出し廊下を歩いてゴス美の部屋前。
コンコンコーン!(軽快なノック音)
「課長ー入るぞー」
ガチャリ。
さてさて、起きてるかな……とぉ!?
「あ、ピカ太さん……おはようございます……」
「なんだ課長!? なにやってんだ地べたに這いつくばって!?」
「いえ、朝食を作ろうと……う……キモチワルイ……」
キモチワルイ? 今キモチワルイって言ったこいつ?
「課長、二日酔いなの?」
「め、面目ございません……」
うわぁ珍しいなぁ。というか初めて見たぞこいつが二日酔いになるの。
「いや、いいんだが、お前、休んどけよ。気分悪いんだろ?」
「そういうわけには……家事は……私の、役目ですから……」
「いや、別にそんな大仰なもんでもなし。いいよ俺が作るから。マリとプランの分も用意しておけばいいんだろ?」
「……すみません……あと……ムー子の分も……」
「はいはい。分かった分かった。それと、課長にも中華粥作ってトマトジュースと一緒に持ってくから。俺の経験上、この組み合わせは効く。カレーの次に効く。だから大人しく待ってろ」
「か、感謝~~~~……」
バタ。
死んだ。
しゃあないなぁ……よっと……くっそ、やっぱり重いな……よーいーしょっと! はい、OK ベッドに戻しておねんねスタイル。しばらく寝てろよ。じゃ、部屋を出て、居間を経由しキッチンへっと。早速料理を作っていこう。まずはみそ汁だな。はいはい。豆腐とあげを切って鍋に入れて、顆粒出汁素顆粒出汁……
……
……ない。
顆粒出汁が、ない。
え? 嘘やん。どうしよ? え? このお宅、顆粒出汁を購入していない? どないせえっちゅうねん。昆布で一番出汁とか取れって? めんどくさ。そこまでしてみそ汁作りたくないわ……でもどうしよ。もう具材は切っちゃったし……チャンプルーにでもするか? いやぁ駄目だ。チャンプルーにはゴーヤがないと。あとビール。これね。苦いゴーヤと苦いビールがたまんねんだ! あ、今日沖縄料理食べに行こ! ふぅ! 楽しみー!
……そうじゃない。
そうじゃないだろ俺よ。
お昼の一杯楽しみだな~~なんて能天気な事を考えて浮かれていてどうする。まずは朝食、これを処理しなくては先に進まん。
でもどうしようかなぁ……出汁なしなんてのは味気ないし、マリとプランも食べるわけだろ? 絶対「わぁお兄ちゃん。みそ汁も作れないんだ~~~前時代的~~~」とか、「ピカ太様は炊事もろくにできないのですね~~~~ガトーショコラ、シャンゼリゼ、マロニエ、ジョルジョ・ド・サンド、ローゼスビット~~~~~」とか、とにかく言われたい放題言われる事間違いない。なんとしてでも、みそ汁を完成させなくては……何か……なにかないか……あ!
デレレデデーン!
いりこあんじゃーん! これで出汁が取れるぞ! よ~~~~し! ではクッキング開始だ! いりこの頭と内臓を取って水の入っ鍋に入れ着火! 一煮立ちしたら弱火にして数分経過したらキッチンペーパーを敷いたボールに移し二、三分したらはい! できたよ出汁が! 長い! 面倒くせぇ! 馬鹿ぁ! 朝からこんな手間かけてんのかゴス美さんはよぉ~~~~~~~~~~そりゃあ毎日美味しいご飯が出てきますよね~~~~~~~~~ありがとうございます~~~~~~~~~なんか前に「俺も朝食くらいできっからさぁ」なんて舐めた口きいてしまってごめんなさ~~~~~~~~~い超恥ずかしいです~~~~~~~~~~~~~す!
……はぁ。
続き作ろ。
ウィンナーを湯で焼きしながらタイミングを見計らって玉子投入。
その間に温めていた出汁に具材と味噌を投入。待つ事数分。できました朝ごはん。しかし、何かが足りない……なんだろう……いったい何が……
……
あ、米炊いてない……
……
備蓄用の、パック米を使おう……
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