サキュバス、大型スーパーマーケットで休日を過ごす事に情緒を感じ始めました2
気を取り直して買い物を続けよう。いいじゃないか海苔のCMを知っていようがいよまいが。
「で、次は何の店を見たいんだ?
「そうだね~……あ、本屋さん行きたいかも」
「本屋ね。さっきマップ見たら三階にあるらしいぞ」
「三階だね。よし、行こ!」
「いいんだけどさ。お前服とか買わないでいいの? あんまり持ってきてないんだろ?」
「お洋服はネットで買ったから大丈夫。ファッションはねぇ。通販がいいんだよ? 持って帰る手間が省けるし、なにより安いし。しかも今ならポイント十倍だよ!? 買わなきゃ損だよね~~~~!」
「……そっか」
俺は知っている。ポイントでお得のように見せつつ、その実そこまで還元されないという事を。
あぁいうキャンペーンにはだいたい上限が設定されて一定額以上は付与されない仕組みになっているうえ、百円で一ポイントと仮定した場合、十倍になったとしても一万円買ってようやく千円分という儚さ。更にいえば件のポイント上限はだいたい一万円程度である事が多い。つまり、MAXでポイントを貰いたい場合は十万円買い物しなきゃいけないのだ。最初からそれくらいの商品を購入する予定ならば問題ないが、ポイントが欲しいからといって無駄なものまで買っては逆に財政を圧迫し結果的に散財なんていう本末転倒な話もあり得る。おまけにキャンペーンに乗じて値上げしたり二重価格表記なんていう悪辣な売り方をしてきやがる店もあって油断できん。貰えるもんは貰っておいていいと思うけれども、ポイント貰えるから買うかぁなんていう安直な発想で手を出すのはおすすめできないね。
と、いう事を言ってやってもいいが、そうすると多分「どうして楽しい気持ちに水を差すの!?」と怒るからやめておく。人間とは時に合理性や効率を度外視した行為に悦楽を感じる物なのだ。ソシャゲで人権キャラよりも好みのキャラクターを使ったりとかね。かくいう俺もスクスタでSRの朝香果林を使い続けたもんだよ。全然関係ないんだけどプリパラのアプリいつ配信されるんだろうな。早くソラミスマイルで神アイドルになりたいんだが。
「ピカお兄ちゃん! なにぼさっとしてるの!? 早く早く!」
「あぁ、はいはい」
元気だなぁ。俺は明日仕事だから心身ともに絶不調だってのに。なんで休みの日って体力回復するはずなのに出社時間が近づくにつれてゲージ減少してくんだろう。呪いでも受けてんのか? 今度教会に行って解呪してもらうか。いや、ジャパニーズファンタジーはテンプルの方がいいのかな? ついでにムー子も祓ってくんねーかな。
さ、そんなくだらない事を考えている間にエレベーターだ。
「ところでピチウ。お前本屋で何買うの? 漫画?」
「うん。最近、ミステリと言う勿れってのが流行ってるから、とりあえず一巻だけ買ってみようかなって」
「お前って案外ミーハーなとこあるよな」
「流行物くらいチェックしとかないと。そういうお兄ちゃんはどうなの? 職業上、知っておかなきゃいけないんじゃない?」
「物によるかな……確かにその漫画は取引してる代理店が噛んでるから把握しておいてもいいかもしれんが、今やってる案件とあんまり関係ないからなぁ」
「へぇ。今何やってるの?」
「……秘密」
「えぇ!? なんで!? 教えてよ!」
「ほら……守秘義務とかあるから……」
「え~~~絶対嘘だよ~~~~だってお兄ちゃんのさっきの間、言いたくないから黙ってますって感じだったもん! 私行間読めるんだからね!?」
読めるんだったら察して突っ込んでくるな。だいたい言えるか。実の妹に「いやぁ、今俺、Vチューバー関係の案件抱え込んでて超忙しいんだよねぇ」なんて。実際に仕事で携わってて幾らか偏見も溶けたけども、なんかいらん誤解を招きそうなんだよなぁムー子がやってるし。そういやあいつこの前再生回数が世界ランキングに乗ったって喜んでたけど、よくよく見たら上位陣が軒並み炎上して勢いが低迷OR引退の憂き目にあった結果だったんだよな。上位に入った事は認めざるを得ないが、いまひとつ釈然としなかった。どうでもいいんだけど。興味ないし。
「まぁ俺の仕事はどうでもいいじゃないか。ところで三階に着いたぞ。さ、さっさと買ってこい。どうせ平積みされてる」
「え? ピカお兄ちゃん、なんで反対方向行こうとしてんの?」
「俺はそこのベンチで休んでいるよ。用ないし」
「あ、駄目ですそういうの。駄目駄目。一緒に行かなきゃ」
「なんで?」
「そういう風に決まっているからです。異論は認められません。意義は自動的に却下されます。是非を問う事さえ許されません。だってそれが地球意思なのですから。蛹を破り蝶は舞う。さぁ無に還ろう……」
オロチかお前は。書店で無に還ってどうすんだ。返本作業でも手伝うのか?
「あ、あと兄ちゃんのおススメの漫画教えてよ。ジャンプ系で」
「いいけど……俺ここ数年読んでないぞジャンプ。話題作コミックで追ってるくらい」
「大丈夫大丈夫。古いのでもいいから。ね?」
ふぅん。じゃあ、私のカエル様かな。
あれそこそこ面白かったんだけど打ち切りくらっちゃったんだよなぁ。惜しいよなぁ。もう少し長い目で見てやればよかったのになぁ。
「あ、ちなみに五巻以上続いてるやつね」
「……」
無情という言葉が頭を過ぎる。ジャンプ連載は此シグルイ也。
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