サキュバス、一肌脱ぎました5
「それでどこまで話しましたっけ? アレルヤと私で誕生日占いやったところめっちゃくちゃ相性良くって、子供の名前はキリエにしようって二人で話し合って、住むところは東京かベルリンで一軒家を借りて、部屋数は少ないけど広い間取りの中で、二人で慎ましやかに暮らすってところまではお話ししましたっけ?」
「うん! 聞いた聞いた! とってもいいと思うなそれ!」
「そうですか!」
全て初耳だが「知らない」なんて言ったらこれらを全部事細かに聞かされるんだろう? 御免だそんなものは。夢女子の創作なんざ現実ではなく魔法のアイランドか渋にでも投稿しておいてくれ。
「じゃ、続きから話しましょう!」
続くんか~い!
「超人機関の残党に囚われた私を救ったのはなんとソーマ・ピーリスで……」
「ムー子、メニュー取ってくんない?」
「あ、はい」
「それで救出の際にハレルヤの人格が出てきてしまうんですが、ハレルヤもハレルヤで私に一目惚れしてしまってアレルヤとの二人三角関係が……」
「アイスコーヒーでいいかなぁ……お前なんか飲む?」
「私カモミールティーで」
「はいはい……すみませーん。こっちこっち」
「はいただいまー」
「それでスメラギさんが言うんです。"貴女にアレルヤとハレルヤ。二人と一緒になる覚悟があるの?"って。そうすると、口ごもってしまって、喉から何か込み上げてきて、うまく喋れなくなってしまって……」
「お待たせいたしました~」
「すみません。アイスコーヒーとカモミールティー。あとホットドッグ一つ」
「あ、私も食べたいですホットドッグ」
「じゃあ二つ……いや、三つください」
「かしこまりました~」
「そんなときに再び現れたのがソーマ・ピーリスだったんです。彼女、最初は何も言わなかったんですけど、何故だか同じ場所にいると互いに分かり合えるような気がして、超兵でもないのに、脳粒子で分かり合えるような……きっと、これが"絆"なんだなって、同じ人を好きになった女にだけ共有される"想いの力"なんだなって……」
「ムー子、お前最近太ったんじゃないか? 運動したら?」
「失礼! 失礼ですよピカ太さん! だいたいこう見えて私運動しているんですからね! 隔週で朝夕二時間くらい歩いてるんです! あいはぶずうぉーきんぐいんうぃーく! おーけー!?」
「それニクソンの散歩だろ……そういえば、マリはちゃんと世話できてるのか?」
「え? あぁはい。一週間交代で散歩に連れて行ってあげてますし、最近ではオリジナル芸、ケルベロスのパンを覚えさせてましたよ?」
「どんな芸だそれは」
「私はいまひとつ要領を得なかったんですが、ゴス美課長はバカ受けでしたよ。ロッキードとかウォーターゲートとか知らない単語を言ってましたね」
「ふぅん。俺もよく分かんないや」
「お互い馬鹿ですね~」
「お前に言われるとムカつくな……」
「お待たせいたしました~アイスコーヒーとカモミールティー。ホットドッグが三つでございます~」
「ありがとうございます」
「ごゆっくりどうぞ~」
「それで最終的にライルがこう呟いたんです。"兄さんと違って、好きな女も狙い打てねぇ”って。この時私、いけないんですけどキュンときちゃって、不意に頬が赤くなってしまったんですよね。でもそんな気ないんです。カッコいいなって、素敵だなって、可愛いなって思ったけど、全然そんなつもりじゃなくて。でも、そんな所をアレルヤに観られちゃうんです。そしたらハレルヤの人格が出てきて……あ、すみません。一人で長々と……」
「いやいや。面白かったよ。ところでどうだい? ホットドッグあるけれども、食べるかい?」
「あ、いただきます」
これでひと段落か。やれやれ。妙に設定が凝っているというか、真に迫った内容だったから途中ちょっと怖くなっちまったよ。まぁ想像力が豊かなのはいい事だ。この才能はV活動に大いに役立つ事だろうから、是非ともいい方向に生かしていただきたい。
「ところでピカ太さん。これ食べたら河岸を変えませんか?」
「そうだな。カフェで長っ尻するのも無粋だし、他を見て回るか」
「というわけでメーシャちゃん! そのホットドッグ食べたらいよいよピカ太さんとデートだからね!」
「あ、馬鹿お前……」
「デート……デー……コフ……シュー……シュー……」
「え? あ! 嘘嘘ごめん! デートじゃない! これは遊び! ただの遊びだよメーシャちゃん!」
「あ、あそび……ヒュー……ヒュー……不純異性交さ……ヒュー! コヒュー!」
「あぁ! どうして! どうしよう! ピカ太さん! どうしましょうか!」
まずお前は黙れと言ってやりたかったがそれよりもまずはメーシャの様態をどうにかする事が先決だろう。先ほどスマフォで調べたところ、呼吸を安定させるのがいいと書いてあった。生兵法はよした方がいいのだが、俺がどうにかするしかあるまい。
「落ち着けメーシャ。まずは落ち着け。そして、さっきの続きを頼む」
「ひゅ……ひゅ……つづ……つづ……き……アレルヤとの……つづ……うん。突如出現したハレルヤはこっちに詰め寄ってきてライルを……」
ふぅ。これでよし。ひとまずは整える事ができたな。ただ……
「ピカ太さん。これ、ホットドッグ一つで足りますかね」
「……もう一つ注文するか」
いったいつまでこの夢小説が続くのか、それが問題だ。
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