サキュバス、受肉の手伝いをする事になりました21

 そんなこんなで三十分が経過しようとしている。もうすぐ突入の時だ。


「ピカ太さん」


「お、課長か。どうしたんだ? さっきまでいなかったが」


「ちょっと調達したいものがありましたので、そこの百貨店で購入してきました。あ、お金は置いてきたのでご安心を」


「そうか」


 この非常時にいったいなにを買ってきたのか気になるところではあるが、どうでもいいや。変に干渉するのもなんだか気持ち悪いし。


「そういや課長。なんか食べる物もってない? ムー子がさっきからうるさいんだよ」


「お腹ペコリ丸です課長! 私いまならキング牛丼完丼できる気がします!」


 あーすき家のあれな。牛丼は割と余裕だったがカレーはきつかったな……一日あれだけ食べれば他何もいらなくなるくらいには破壊力が高い。胃に全部入れると変な汗出るし寝込むんだよなぁ。


「そういうと思ってカロリーメイトを持ってきたから食べなさい」


「あ! やったー! ありがとうございます! フルーツ味とは分かってますね! ちなみにピカ太さんは何が好きですか?」


「チョコかプレーン」


「うっわ面白みに欠ける回答……」


「フレーバー五種類のうち二個が面白くないってなんだ。どう答えればいいんだよ」


「そこはあれですよ。僕も君と一緒でフルーツが好きだなぁ……でも、君の方がもっと好きだな。とか!」


「カロリーメイトとお前を比較した場合全フレーバーでカロリーメイトが勝つから安心してくれ」


「またまたーそんな事言ってーあ、そうだピカ太さん? 私となりますか? フレンドに? まぁフレンドといってもセッk……ごひゅ……」


 喉元への貫手。あぁ、俺がデコース・ワイズメルだったらそのままストラトブレードで喉掻っけだのに。残念だ。


「お兄ちゃん。カロリーメイトってどんな味がするの?」


「え? マリ、食べた事ないの?」


「うん」


「そっか……うーん、カロリーメイトの味を説明するって難しいな……なんだろう……しっとりしたクッキーみたいな」


「へぇ、食べてみたいなぁ」


 身体が手に入ったら食べさせてやろう。果たしてマリは何味が好きなのか。


「ピカ太さん。そろそろ……」


「あ、もう三十分か。よし、行くか。おい! ムー子! 起きろ! 時間だぞ!」


「お、おおはううええ、あええあい……」


「まだ喉潰れてんのか。でもまぁ足が大丈夫だし行けるだろ。さ、出発だ」


「おょ、ああいいあいあああんあおいいいいえう」


「何言ってるか分かんねー! うるせー! 知らねー! 𝑭𝑰𝑵𝑨𝑳 𝑭𝑨𝑵𝑻      

𝑨𝑺𝒀 行くぜー!」



 別にムー子はいらない存在なのだが盾とか身代わりにはなりそうだから連れていく事にする。あと、こいつだけ安全な場所に身を置いているのはなんかムカつく。



「……あれ? オートロックじゃんこのマンション」


 どうやって入るんだこれ。パス知らねーぞ俺。


「あ大丈夫です。このマンションそんなに新しくないので、これでなんとかなりますよ」


 さすがゴス美! しかし、その手に持ってるのは……


「下敷き? そんなんでオートロック突破できるの? 静電気起こしてショートさせるとか?」


「まぁ見ていてください。これを……こうして……」


 屈んで、下敷きを自動ドアの隙間から下敷きを投げると……おぉ凄い! 開いた!


「センサーを誤認させたのか。なるほど納得だが、いいのかこんな簡単に開いてしまって」


「さすがに最近の設備はこういかないですけどね。鬼がいるから怖がって取り替えられないのでしょう。さ、入りましょうか」


 頼りになるな。どっかのバカとは大違いだ。


「なるほど……こんな簡単な方法で不法侵入が……明日やってみよ! それで出てきた人からお金もらお!」


 早速よからぬ事を考えてるなこいつ。


「金貰うつったって、どうするんだ? 消防署の方から来ましたー。つって消火器でも売るのか?」


「そんな詐欺今日日引っかからないですよピカ太さん。私はやるのは完全オリジナル。犯罪の常識を根本から覆す手法です」


「ふーん。どうやんの?」



 犯罪って言っちゃったよこいつ。まぁ、悪魔に倫理観もクソもないか。



「まずピンポンして扉を開けさせます。その後は馬乗りになって強制和姦に持ち込み既成事実を作成。後は隙をついて金目の物をあさってトンズラって寸法です! どうです!? 完璧じゃないですか!?」


「……普通に窃盗してるだけじゃないかそれ」


「結果はそうですが過程が大事なんですよ過程が!」


「ふーん……」


 どうでもいいが出てきた相手を組み伏せられなかったら終わりじゃねぇかそれ? だいたい盗むっつたって完全に証拠残るじゃねぇか。こいつ本当に頭の中お花畑だな。義務教育受けたのか? っと、馬鹿な話をしている間にエレベーターに到着だ。部屋番は控えているから問題なし。後は進むだけ……おや?


「……下ってくるぞ。エレベーター」


「逃げ遅れた人がいるんですかね?」


「リストを取ってあるからそれはない。このマンションは完全に無人のはず」


「……」


 ゴス美のいう事が正しいのであれば、いったい何者が乗っているんだ……四、三、二……到着は次……


 ポーン。



 到着! 一階に! 開く扉! さぁ! 乗っているのは!?


「……」


「……」


「……」


「……」


 言葉を失う。恐らく、他の奴らも同じであろう。エレベーターに巨大な赤鬼が身体縮めて乗っているなどという異様を目の当たりにすれば、言語機能も麻痺するだろう。


「よぉ人間。お前ら、俺を殺しにきたのか?」



 喋った! 声怖! とういうか、どう返事したらいいんだ!?

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