転生したので幸せになりましょう

@bakosu

一章 1 ルルス村

 私はごく平凡な学生だった。普通に高校に進学して、大学どこに行こうと悩んでいる高校二年生だった。そんな私はある日、ビルの上から落ちて来た看板に潰されて死んだ。人間、いつ死ぬかわからないと思っていたが、まさか看板に潰されて死ぬなんてね。

 それで死んだ私は、よくわからない輝く場所にぷかぷかと浮いている。どこだろうココ。残念ながら私の身体は現在お墓の中に収められている。もう一度蘇るチャンスなど無い。私と同じように、透けた霊体になった人々は光の向こうに流れて行く。私も、そうするべきなのだろうと思いその流れに身を任せる。けれど、途中の道で遠くから声が聞こえた。知らず知らずの内に、道から外れてその声のする方に身体が近づいていく。だって、その声はあまりにも切実だったから。

 光の道から外れた後、私が目にしたのは知らない町だった。雪の振る寒い夜に、路地裏に女が一人倒れている。死にかけた女の腹は膨れていて、彼女は苦しげに喘いでいた。

『大丈夫?』

 私は彼女に声をかける。女は私を見て、目を見開いた。

「あぁ……女神様……どうか、この子を助けてください……」

 女はすがりつくように、私の手を掴む。私は驚きつつも、彼女の手を握り返した。死ぬ女の手を振り払う事など出来なかった。

『うん、大丈夫。任せて』

 すると、女の腹の中から光の球が出て私のお腹の中に入った。

「ありがとう……ございます…女神さま……これで、この子も……幸せに……」

 そうして女は瞳を閉じた。私の身体が後ろに引っ張られる。再び、あの光の道へと連れ戻された。私は、周りの霊体達と同じように次の命として生まれる為に光の向こうへと向かった。別の魂を大事に抱えながら。

 



つづく





 処女作です。普通に異世界モノが書きたくて、書き始めました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る