ゲーミングハウスへようこそ!

志馬なにがし

1 真っ暗な部屋で


〝ゲームは明るいところで、なるべく離れてプレイしましょう〟




 うるせえ。


 ゲームをナメんな。


 ゲームとは、刹那を争う世界。


 思考より早く、骨髄反射で闘う世界。


 瞬きを忘れ、全身の感覚をフル動員させても、まだ足りない。


 人を辞め、血へどを吐くほど練習して、訓練して、そうやって手に入る人外の領域。


 俺はそういうところで闘っている。


 つまり、なにが言いたいかというと、


「ゲームは真っ暗な部屋で高リフレッシュレートモニターに近づいてプレイしましょうだ!」


 目の前のモニターには俺の操作する嵐虎らんこにフルボッコにされている小桃ショウタオがいた。


 アーケードファイト――いわゆるアケファイは一対一の格闘ゲームだ。もともと世界大会が開かれるような人気タイトルで、今ではネット対戦が可能になっている。つまり、いつでもネットを介して世界のだれかと対戦ができる。


 対戦相手のZaKiから仕掛けてきて、俺の圧勝が続いている。


 圧倒的な差だった。俺のワンサイドゲームと言ってもいい。


 相手は、なんというか……どんくさい。


 反射神経が鈍いのだろうか。ガードから小パンチを打つタイミングが二フレームほど遅い。だから、楽勝で俺は投げ技に入れるわけだけど……。


「これだけ実力差あって、あきらめないメンタルは……認めるよ」


 そろそろ弱いものいじめみたいになってきた。


 俺は「悪い」と呟いて、いっきに相手のライフを削りきる。


 俺、WIN。


 これだけのワンサイドゲームをすると、対戦後、即切断されるか、チャットで無視される。ゲーマーは総じて負けず嫌いだ。そんなことを考えていると、対戦相手のZaKiからメッセージが送られてきた。


《次は負けません!》


 って。


 あ、こいつも負けず嫌いだって、少し笑った。

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