第158話 もうすぐお別れ

 3日!?

 この世界があと3日で終わる。

 そのあまりに急すぎる展開に僕は驚き、2、3歩後ずさりした。

 周りの皆も驚き、声を上げる。


「それは本当なのか!?」


 マリアンが声を震わせアスミの両肩を掴み、ゆする。

 反対にアスミは一点を見つめたまま、無表情で驚いた様子も無い。


「本当も何も……それはこの世界を作った運営、否、あえて神と呼ぼう。神が決めたことだ。我々はそれに従うしかない」


 従うしかない。

 アスミの無機質な声が耳に響いた。

 勝手に閉じ込めたあげく、今度はすぐに出ろとは。

 何と、神は気まぐれなのか。

 この世界で精一杯生きて来た僕らは、神の手の平の上で転がされているだけだったのだろうか。


「ユウタさん。地球に戻れるなら、願ったりじゃないですか」


 ガイアが僕を慰める。

 そして、僕の肩に柔らかくて小さな手を乗せた。

 僕はその手を握り返した。

 

「僕達は一体何なのでしょうか? 神の玩具なのでしょうか? 神は僕らが右往左往しているのを見て何を思っているのでしょう? そして、何故、幸せだけでなく試練を与えるのでしょうか?」


 僕はガイアの手を握ることで、少し安心した。

 だが、また少しずつ不安が立ち上って来ていた。


地球ちきゅうもそんな世界なのでしょうか?」


 そうだ。

 僕は虚しくなっていたのだ。

 自分ではない何者かの力で、それまでの生き方や考えが変化させられるということに。

 それは何処に行っても付きまとうことなのだろう。


「ユウタさん。例え、誰がどんな思いでどんな世界を作り、私達がそこで生まれたとしても、そこで一生懸命生きるしかないのです」

「ガイアさん……」

「私の祖父、大祖先様が行っていました。ゲームの中の世界も、地球ちきゅうも、同じ様に理不尽で自分の思い通りいかないと……。彼は今のユウタさんの様にそのことを嘆いていました。だけど、私はこう思います。それを受け入れ生きていくことに価値がある、と」


 彼女の言葉は僕の心を癒して行った。


「死ぬ間際に後悔さえしなければいいのです」

「分かりました!」


 僕はその言葉を聞き、決心した。

 すぐに魔王を倒し、地球ちきゅうに皆を連れて行く。

 皆に向かって、僕はそう宣言した。

 ここにいるメンバーで次の段へ向かう。

 一人、この場を動こうとしない者がいた。

 緑髪のエルフ。

 彼女はポツリとこう言った。


「ユウタ、もうすぐお別れだね」


つづく

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