第111話 疑惑の救世主 狐は化ける時、眉に唾つける
<残念ながら、大祖先様はマリアンの凶刃に倒れ、死亡しました>
ロドリゴが声を詰まらせる。
彼の言っていることを信じない訳ではないが、念のためフレンドリストを確認する。
確かに大祖先様の名前の横には、髑髏マークが付いていた。
「申し訳ありません。私達が、転移玉などに頼らなければ……」
<ガイア様、自分をそうやって責めないでください。仕方のないことだったのです>
私は息を深く吐いた。
「大祖先様……」
厳しくも優しかった大祖先こと祖父はもういない。
そして、父も母も兄も妹も、もうこの世界にはいない。
皆、ギルド間の争いやモンスターとの戦いで死んでいった。
「どうしたんだい?」
ユウタが私に問い掛ける。
「大祖先様が……」
祖父が死んだということは、この世界に閉じ込められた最初の世代は全ていなくなったということだ。
それはつまり、
「なんとしても、このゲームをクリアしなければ」
私は決意を新たにした。
死者の魂はゲームクリア後に救われる。
その神話だけが、心の拠り所だった。
「頑張りましょう! ユウタさん」
「あっ……ああ……」
だが彼は何故か、きょとんとした表情だった。
<ガイア>
「リンネさん」
冷静な声が脳内に響いた。
<今、ラストダンジョンにいるんだってな>
「はい」
<双子の段に転移したって聞いたぞ>
「申し訳ないです」
<謝らなくてもいい。ユウタとフィナは一緒にいないのか?>
「ユウタさんなら私の目の前にいます。フィナさんとは……はぐれてしまいました。通信も届きません」
しばし沈黙。
通信の向こう側で何か考えているのだろう。
<ガイア>
「はい」
<気を付けろ。目の前にいるのが本当のユウタとは限らない>
「え?」
リンネの言ったことの意味が分からない。
<双子の段の、双子の意味を良く考えろ>
「双子……」
<憶測を語ることでお前を混乱させたくない。それに……自分で答えに行き着いたほうが、理解が深まるだろ?>
ここにいない彼女よりも私の方が真実に近い。
そういった意味では、自分で道を切り開くしかないのだ。
<一つだけ助言になるかどうかわからないが……、テトラは死ぬ前にこう言った。自分ソックリの奴に殺される、と>
そこで通信が切れた。
改めてユウタをじっと見る。
姿形は上から下まで彼そのものだ。
だが、さっきから感じる違和感は一体なんだろうか?
私はユウタと付き合いだしてからそれ程時間が経っていないが、今の彼がいつもの彼と様子が違うということが何となく分かる。
つづく
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