第737話 聖都観光
数日後。
俺は一人で聖王国の聖都へと足を向けていた。
とはいえ、少し寄り道してきたけど。
マリアさんの経過は順調そうだ。
まだ初期なので生まれるのは来年になるか。
何にしても子供達のお陰でメンタルが安定したのか穏やかな様子で本当に良かった。
恐らくこの件はある程度隠してはあるが神経由で教皇にも伝わってるはずなのだが、向こうからのアクションは今のところ何も無かった。
マリアさんやアーク、他の【七聖】への命令も変わってないらしい。
黙認ということだろう。
次の【聖母】候補が居るからかもしれないが、何にしても邪魔してこないなら問題は無い。
邪魔してきても何とかするけど。
せっかく親子が元に戻ったのだ。
無粋な真似はしたくないしね。
そんな訳で、マリアさんは大丈夫だったので、俺は用事を済ませてから一人聖王国の聖都に転移で飛んでいた。
お散歩だから一人で来たが、街並みは変わりないように思える。
活気が前より少しない気もするが、人はいるし物も流れてる。
一応普通ということだろう。
「おっちゃん。リンゴ頂戴」
「おうよ。この前も来てた坊主だな。オマケしとくぜ」
「あんがと。にしてもちょっと高くなった?」
「ああ。お布施が上乗せされてな」
聖王国の税金は税とは言わず、お布施やお気持ちというように濁した形で使われている。
宗教国家とはいえ、税金だと響きが悪いのだろうが、にしてもお布施やお気持ちもそれはそれで黒く感じるものだ。
「最近どう?」
「どうもこうもなぁ」
「あぁ、うん。分かったよ」
チラリと一瞬視線を向けた先。
そこには聖騎士の見張りがだらしなく座って酒を飲んでいた。
「あれ良いの?」
「聖水だから良いんだとよ」
「便利な言葉だね」
「だな。バチが当たるぞ、たく」
住民の呆れも仕方ないくらいにはダラしない姿だが、それだけサボってもバレないくらいに人手不足なのだろう。
聖都の治安維持といっても、聖王国で暴れるアホはほとんど居ないし、ああして腑抜けてる連中しか残ってないからこそ見れる光景でもある。
「そろそろ行くよ。オマケありがとうね」
「おうよ。坊主に神の御加護があらんことを」
意外と信心深い店主であった。
ちょっと強面だが。
まあ、聖都だとこういう人は意外と多い。
外よりも神様を信じてる……というよりは、日常に文化に神様を敬うようなものが残ってるのだろう。
こういうのを初めて知った時は好奇心が満たされるものだが、それ以上に色々知ってしまうと楽しめなくなる。
俺には歴史家になる才能はないようだとしみじみ思いつつ買ったリンゴを一口。
「酸っぱいなぁ」
もう少し熟した方がよさそうだ。
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