第299話 気になる存在

「でも、シリウスのお陰で希望が出てきた。ヌロスレア再興も現実味を帯びてきたし、本当に助かるよ」


暗い話が続く中、それを取り去るようにそんな事を言うケイオス。


「やけに信じてくれてるね」

「信じる者は救われるってね」

「それだけじゃないでしょ?」

「あはは、シリウスにはお見通しだよね」


新しく淹れたお茶をゆっくりと味わってから、ケイオスは言った。


「シリウスの話をあの店主から聞いたのも勿論だけど、何よりも直接シリウスを見て信じられると感じたからね。シエル殿や虎太郎殿、アリシアさんや、子供たちの様子を見てもシリウスの人柄は手に取るように分かるし、何よりもこれまで見た中でここまで高度な魔法を息をするようにできる魔法使いには出会ったことがないよ。それだけでも、その実力が確かなのは間違いないよね」


孤児院の結界やら、部屋に張ってる防音、遮音の魔法、孤児院全体に設置した魔道具から俺ならその偽物に対抗出来ると感じたのだろう。


そして、アリシアや孤児院の子供たちのために動いてることも把握してるようだしその点でも信じらると思ってるのかもしれないね。


「それと、可愛い身内のアドバイスもあってね」

「可愛い身内?」

「うん、何れシリウスには会わせたいけど、仲良くなれると思うんだ。少し人見知りなのと多少心配性なんだけど、その程度ならシリウスは問題ないでしょ?」

「まあね」


にしても可愛い身内ねぇ……。


言葉の端から、どちらかといえば最初に上げた信用できる理由よりも最後に出てきたそちらの方がウエイトが大きそうに思えた。


「さて、それで具体的な話に関してなんだけど、シリウスの今後のプランは何かあるのかな?」

「ある程度はね」

「流石。聞かせて貰えるかな?」


そう言われたのである程度ざっくりとした内容を伝えると、納得したような表情を浮かべるケイオス。


「なるほど、シリウスらしいかもね」

「褒めてるのそれ?」

「僕には真似できないからね。かなり褒めてる」

「そうかい」

「何にしても明日から顔を売る必要もあるね。問題はあの化け物に勘づかれないかだけど……」

「その辺は俺が上手いこと隠蔽するから気にしなくていいよ」

「心強いねぇ、ならお願いするよ」


そうして、軽く今後の方針と連絡手段に関して打ち合わせてから、ケイオス達は自分の屋敷へと帰って行った。


正直、ケイオス自身がかなり頭が切れるようだし、話分かる相手なのは幸運だったかもしれない。


気になることがあるとすれば、ヌロスレア国王の偽物である化け物の存在――なんかではなく、ケイオスの言っていた『可愛い身内』というワード。


絶対的な信頼のある様子だったし、ケイオスが信じてるのなら悪い相手ではなさそうだけど、少し気になるといえばなる。


感覚的なものが大きいけど、その人物の存在は今回の件でかなり大切になりそうだし、心に留めおこうと誓うのであった。

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