第292話 予期した来客
「さてと……そこの人達は俺に用事があるということで間違いないかな?」
あれこれ考えないといけないとはあるけど、夕飯を作る前にまずは近くに来ている来客の相手が先決かと思い、俺はそう声をかける。
「シリウス様?あの……そちらに、どなたか隠れてるのですか?」
「三人ほど居るね」
虎太郎、シエルは最初から分かっていたので、特に驚いては居なかったけど、回復魔法以外は戦闘に関しては不向きなアリシアは突然の俺のセリフに驚いたようにそちらに視線を向けていた。
「はっはっはー。やっぱり噂の第3王子様は誤魔化せないかー」
ややあってから、そんな事を言いながら魔法の効果で隠れていた人物が姿を表す。
俺より年上で、成人したばかりくらいだろうか?
15歳前後のレグルス兄様とは少し違うタイプのイケメンさんと、魔法使いと思われる男性が一人に、大剣を持った女性が一人の三人構成であった。
どことなく、女性はイケメンさんに面影があるというか、血筋が近そうな雰囲気も感じるけど、それにしても……
「そろそろ来ると思っていたけど、まさか本人が来るとは思わなかったなぁ……」
「ん?その様子だと僕のことも知ってるのかな?」
「勿論ですよ。ヌロスレアの第3王子様」
そう、この目の前の人物こそ、ヌロスレア王国の第3王子にして……俺が兄様達からの情報で、クーデター組織の旗頭としてスカウトしようと思っていた人物である、ケイオス・ヌロスレアその人であった。
「自己紹介は不要そうだね。良かった良かった」
「ちなみにこちらの自己紹介は必要で?」
「んー、それは夕飯の後でいいんじゃない?スレインド王国の第3王子は料理発明の天才って聞いてるし、今夜の夕飯、楽しみにしてきたんだ」
ちゃっかりと夕飯をご相伴にあずかりに来たらしい、ヌロスレアの王子様だけど、不思議と親しみやすいオーラがあるので嫌味には感じなかった。
「というか、口調はどうしたらいいかな?僕の方が出自的にも立場的にも下のはずだけど、敬語とか気にする?」
「いえ、そのままで大丈夫ですよ」
元より、その程度のことを気にするような根っからの王族でもないし、そういうのを気にするような場面でもないのも大きい。
何より、未来のヌロスレア国王の最有力候補(俺や兄様達の中では)なので、その辺は気にすることもないだろう。
「なら良かった。僕のことは気安く名前で呼んでよ。敬語も必要ないし、僕もシリウスって呼ばせて貰っていいかな?」
「分かった。勿論そう呼んでよ」
「ありがとう、シリウス」
これが、俺とケイオスのファーストコンタクト。
最初の印象だけだと、気安く話しかけやすい感じの庶民派と言うべきか印象であったが、これが半分くらい計算も入ってると知ると見方は大分変わりそうだが、もう半分の天然な素の部分と接する時間の長い俺はそれを知っても特には違和感はなかったりした。
色んな人間の裏表を見てきたし、このくらい強かな方が王に向いてるだろうという感想もあったりはしたが、それはそれかな。
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