第222話 大人の嗜み

大人モード(俺命名)になって、オシャレなバーに入ってみたけど、お酒自体飲むのが久しぶり過ぎるかもしれない。


まだまだ肉体が子供の今世では当然縁のないものだし、過去2回の前世も無理矢理飲まされたり、必要に応じて飲んだくらいで、そこまで良い思い出がないのと、それ程好きでもなかったからだろうけど、何にしてもふらりと立ち寄ったオシャレなバーで、のんびり一杯――なんて、実に優雅に思えるよね。


こういう贅沢も悪くない。


ちなみに、この状態(大人モード)でお酒を飲んでも、元の今世の体には何ら影響がないらしい。


例えこの姿で大ダメージを受けても、元の俺には何の影響もないというのだから、本当にチートな代物だと思う。


女神様とお話できるだけでも凄いのにね。


本当に女神様には頭が下がります。


本日も女神様に祈りを捧げつつ、メニューにある店主のオススメを選んでみる。


「どうぞ」


カランと涼し気な音をたてて、ウイスキーのロックを出してくる店主。


琥珀色のそれは、間違いなくウイスキーのようだけど、オススメでウイスキーが出てくるとは少し驚く。


しかも、オンザロック……ようするに、氷だけの割り方で、その氷もグラスにあうように少し大きめのものが入っており、見た目は凄く綺麗だ。


ストレートで飲んだことはあったけど、ロックは無かったなぁと思いつつ口にすると、ストレートに飲んだ時とは違った風味で悪くない。


度数が強いお酒自体は前世で嫌がらせのように飲まされたので、飲めないこともなかったけど、あの時は無理やり飲まされていたので、こうして落ち着いて口に出来るとかなり印象が違ってくるのだなぁと少し苦笑してしまう。


お酒自体、飲めないことはないけどそこまで好きでもなかった俺だけど、こうして余裕のある時に1人で飲む分には雰囲気もあって良いものだと、新しい発見が出来て嬉しくなる。


一人でも楽しいけど、成人したら婚約者達を連れてくるか、兄様達や虎太郎、ドレッド先生、アロエ先生辺りと飲むのも楽しいかもしれないとも思った。


(大人の嗜みと言えばいいのかな。まあ、悪くないかも)


揺らす度に、涼し気な氷の音が響き、店内の雰囲気と合わせて不思議な大人の空間になるので、それを味わいながらグラスを傾ける。


女神様曰く、この時の俺は実に『渋くてカッコよかった』らしいけど、残念ながら俺にはそれは見えてなかったので、この様子を知るのは女神様と店主のみのようだ。


(でも、普段から飲むことはしないかもなぁ……。やっぱりたまにだから良いんだよね)


酒には強いけど、たまに飲むくらいが丁度いいと改めて分かったのも大きかった。


お酒は程々にね。














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