第184話 娘が居たらしい

「凄いね、シリウス。見たことない剣技だったけど……もしかしてそれがシリウスが雇った異国の騎士が使う剣技なのかな?」


虎太郎のことを知っているレグルス兄様は、そちらにあたりをつけたのか、そんな風に褒めつつ尋ねてくる。


なるほど、虎太郎という異国の者が居ることでこういう誤魔化し方も出来るのかと、少し感心しつつも、なるべく自然に返事をする。


「ええ、そんな所です」

「刀だっけ?そっちの方がシリウスは向いてるのかな?」

「……刀だと?」


レグルス兄様は俺の言葉をよく覚えていて凄いと思っていると、刀という単語にゾルニが反応する。


「ええ、シリウスの雇った騎士の中に、異国の地の出身で刀という武器を使う者がおりまして」

「ふむ……お前さんは刀は扱えるか?」

「多少は」

「そうか……ならば今度作るとしよう」


どことなく楽しげにそんな事を言うゾルニ。


というか、また作ってくれるのか……有難いけど、魔法ばかり使っているのでそれを作って貰っても使うかは不明であった。


「おーい!親父ー!」


そうして、レグルス兄様とゾルニに見られつつも、ゾルニの用意した案山子で試し斬りなどをしていると、ふと工房の方から若い女の子の声が聞こえた。


「なんだか、えらく時間かかってるけど……って、あれ?レグルス様が居る」

「やあ、キャンディ」


知り合いなのか、レグルス兄様は爽やかに答える。


そのドワーフの女の子は、身長的には他のドワーフとそう変わらないけど、快活で明るそうな元気のある感じの女の子で、親しみやすさのある美少女と言えた。


「あれ?親父、その子が持ってるの……まさか聖魔剣!?ちょっ、子供には危ないでしょ!」


ギョッとしながら、俺の持つ聖魔剣に視線を向けるその子。


それにしても、今ゾルニに親父って言ってたし、ゾルニの娘さんなのかな?


「親父!いくら誰も使い手が居ないからって、子供で試さないでよ!危なすぎるでしょ!」

「落ち着けキャンディ。剣をよく見れば分かるだろうに」

「はぁ?……って、あれ?嘘、完璧に制御されてる……」


俺に近づいてくると、聖魔剣と俺をジロジロと見てくるその子。


あの……そんなにベタベタしなくても……


「キャンディ、弟が困ってるから、少し落ち着こうか」

「弟?レグルス様の?」


驚いたような表情で俺とレグルス兄様を見るその女の子。


まあ、普通に見てたら俺とレグルス兄様が兄弟だと言われてもピンと来ないのは仕方ないと思う。


確かに血の繋がった兄弟ですが、兄ほど優れた容姿でないのは許して頂きたく……私にはどうしようもないパラメーターなので、よしなに……


そんな事を思いながらも、不思議そうに俺とレグルス兄様を見比べてから、そちらよりも聖魔剣が気になったのかやっぱり観察を再開するその子。


暫く、観察されて、その子が落ち着いたのは30分後であった。







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