第172話 入学祝い

「おや、お帰りシリウス」


学園長と話してから、その足で城へとやって来ると、廊下でばったりとレグルス兄様と遭遇する。


「ただいま帰りました、レグルス兄様」

「んー、その顔だと早速学園で何かあったのかな?」


……あの、秒で見破るの止めてくださいませんか?


そんなに俺は顔に出るタイプではないはずなのだが、流石はイケメン兄様というべきか。


「何かあるのが前提なんですね」

「現に入学の報告だけに来たわけじゃないでしょ?」

「まあ、そうですね」


というか、もしかしなくても既にご存知なのか?


レグルス兄様のことだし、事前に父様が学園長から相談を受けており、その場に居合わせた……または、同席していた可能性も否定は出来ない。


「父上なら、執務室だろうね。僕も用事があるし一緒に行こうか」

「分かりました」


そうして、レグルス兄様と連れ立って父様の元にむかう。


「それにしても、シリウス少し慎重伸びた?」

「そう見えます?」

「うん、1ミリほど」


……あの、そのネタ、うちの可愛いセシルと被ってますよ?


というか、伸びても1ミリってやはり誤差でいい気がする。


「それにしても、あの小さかったシリウスがもう学園に通う年になるなんて……って、そういえばシリウスは飛び級だったね」

「レグルス兄様もそうだったのでは?」


確か、そんな話を以前聞いた覚えがあったのでそう尋ねるとレグルス兄様は苦笑気味に答えた。


「まあね。ラウル兄さんと僕は予定より早めに学園に入ることになってね。その理由は知ってるかな?」

「いえ、聞いた事ないです」

「まあ、簡単な話だけど、父上の代で色んな改革がこの国は起きたからね。その中に学園も含まれてて、テコ入れに息子も協力させたって訳」


なるほど、それは確かに納得な理由だ。


頭のいい爽やかイケメンのレグルス兄様なら、多少早く学園に入っても問題ないし、ラウル兄様も腕がたって、カリスマがあるから何とでもなる。


2人の入学で、改革中で混乱のある学園の秩序を正させたということかな。


本当に凄い兄と父を持ったものだが、そのお陰で今があるのだから感謝しないと。


「最も、魔法科に関しては僕らじゃどうしようもないから、シリウスにまで回って来たんだろうけどね」


ウチの家族は、俺以外はそこまで魔法が得意という訳でもないし、国防を担う魔法師団からも人は集めにくい。


そもそも、魔法師団自体そこまで人数も多くないので、余裕を持つためもっと魔法使いの育成にも力を注ぎたいのだろう。


「というか、やっぱり俺が今日学園長から頼まれたことの内容知ってましたか」

「シリウスに学園長の情報話したのは僕だし、知っててもおかしくはないよ」


まあ、それもそうか。


「次の国王はラウル兄さんだけど、この手の仕事は僕の担当だし、父上からの引き継ぎが多くなってきてね。予想より早く隠居するみたいだね」

「大変そうですね」

「まあね。でも、シリウスのお陰で色々楽にはなったし、このくらいは問題ないよ」

「えっと、出来ることからお手伝いしますので」


そう言うと、レグルス兄様はくすりと微笑むと俺の頭に手を乗せて言った。


「ありがとう。そうだ、今日は入学式だったんだよね。入学祝いという訳じゃないけど、シリウスが前から欲しがってものが手に入ったから、後で渡すよ」

「欲しがってたものですか?」


いまひとつピンと来ない。


確かに欲しいもの情報集めにのためにレグルス兄様に色々話してはいるけど、果たして何を入手してくれたのか。


「見れば分かるよ。それよりもまずは父上に用事だよね?」

「そうですね。では、楽しみにとっておきます」

「うん、そうしてよ」


しかし、弟の入学祝いに何かくれるなんて……前々から分かってはいたけど、やっぱり兄様は優しいなぁ。


そんな事を思いつつ、何を貰えるのかワクワクしながら、父様の執務室までレグルス兄様と軽く話すのであった。







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