第154話 お手軽別荘

「そういえば、以前シリウス殿が希望していた別荘の件だが……」


自身の石碑を建てることに、納得いかなくとも納得するしかないと思い何とか苦い思いを飲み込んでいると、そんな事を切り出す族長。


そっか、ダークエルフの里を救った……というか、ラーニョセルペンティを倒した報酬の時にこのダークエルフの里に別荘を建てたいと話したんだったか。


「何ヶ所か候補地があるが、好きな場所を選んでくれて構わない」


地図を見ると、何処も適度に里の住宅街から離れており、かつ広めの面積を確保できそうな結界内の良い立地でしばらく迷うが、そのうちの一つを提供してもらうことにした。


これで、別荘が増えたので遊びに来るのも楽しみというもの。


……まあ、石像は俺のいる間は自分の魔法で隠せばいいのだと納得しておくことで、心の平穏を保とう。


「しかし、建築と移築の魔法か……そんなオリジナル魔法まで使えるとはな」


別荘について、既に用意してきたものを目の前で移築すると、そんな感想を漏らすエデル。


一応、ダークエルフの里にあっても違和感のない外装にはしてあるが、少しだけ大きく広めに作ってあったりもする。


将来的に子供とかが出来ても問題ないためであるが、個人的には子宝に恵まれたいものだが、相続とかの関係で苦労させない範囲を選ばないといけないのは少し難しいところであっても、それでも愛する婚約者達との愛の結晶ともなるときっと可愛いので、是非とも愛でたいところ。


あれだね、気が早いけど祖父母にもなれたら嬉しい。


可愛い我が子の孫とか、絶対溺愛しそうだしね。


「族長さんならやろうと思えば、すぐに使えると思いますけどね」

「出来なくはないが……魔力の方が不安になるから使えなさそうだな。シリウス殿程魔力量があれば余裕なのだろうが、私では扱えきれないだろう」


不可能ではないと言いきれる時点で、族長もかなり凄いと思う。


「にしても、大きめに作ったな。これで坊主の嫁が嬢ちゃん達以外に増えても安心ではあるのか」

「いや、これ以上増えるのはちょっとねぇ……」


7人でも多いのだから、これ以上増えたらどうなるのやら……まあ、子供たちに不自由な思いをさせないし、後継者争いとかも起きないように上手いことどうにかするつもりはあるが、結婚後の夜が大変そうなので出来れば増やしたくないところ。


「虎太郎は第二夫人は取らないの?」

「俺は嫁さん一筋だっての。聞かなくても分かってるだろ?」

「知っては居るけど、ダークエルフのお嬢さん方から熱い視線貰ってたしねぇ」


子供の俺よりも、厳つくても男らしい虎太郎の方が見目麗しいダークエルフのお嬢さん方にモテるのは自明の理。


子供たちの声援に混じって、虎太郎にアピールするチャンスを伺う彼女達の捕食者の視線を見ると、本当に子供で良かったと思えてしまうが、虎太郎は気にした様子もなく言った。


「ま、一時の気の迷いってやつだろ。そのうちいい人が見つかるだろうし、俺の守備範囲の狭さじゃ相手することはまず無いだろうな」


これくらい堂々と断れたらなぁ……前世で染み付いたイエスマンは中々消えないので、俺も虎太郎のようなメンタルが欲しいところ。


うむ、頑張ってみよう。



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