第150話 お子様ランチ

「へー、和食かぁ……あっさりしてていいね。僕はこっちの方が好きかもしれないなぁ」


鯖の味噌煮やほうれん草の胡麻和えを食べてそんな感想を漏らすレグルス兄様。


ガッツリとしたものよりも、こちらの方がお気に召すかと思っていたが、見事にハマってくれたようで何よりだ。


「こりゃ美味いな!量もあって深い皿1つで済むのもいい!」


反対に、カツ丼を食べながらそんな感想をくれるのは肉食系のラウル兄様であった。


見事に正反対の兄弟だが、双子というのは正反対になる決まりでもあるのだろうか?


まあ、そうでない双子も沢山見たが、レグルス兄様とラウル兄様、ティファニーとスワロの姉妹とウチの家族はそういう傾向にあるようだ。


「シリウス、なるべく早く安定供給出来るようにしてね」

「ええ、努力します」


そして、母様は案の定というか、既にこれらの料理を流行らせる気満々であった。


まあ、分かってて教える俺も俺だが……黙っていてバレた時の方がもっと大変だし、素直に報告するに限るだろう。


美味しいものは皆でだよね。


「でも、ティファニー達のは少し変わってるわね」

「ええ、お子様ランチですよ」


オムライスをベースに、スパゲッティやエビフライ、そしてプリンを入れた渾身の作であるお子様ランチは、勿論姪であるティファニーとスワロ用に用意したものであった。


「おじちゃま、凄く美味しい!」

「そっか、なら良かった」


無邪気に食べるティファニーは、案の定というか、口元にケチャップを付けていたので、タイミングを合わせて拭いてあげるが、子供というのはやはり見てて微笑ましいものだ。


「刺さってたのは、ウチの国の旗かな?シリウスは相変わらず器用だね」

「お子様ランチには必須ですからね」


お子様ランチといえば、誰もが想像するのはご飯物に刺さった旗だろうから、俺も頑張って作ってみたが、この国の旗なのは愛国心の為せる技とだけカッコつけてみることにする。


……うん、似合わないよね。


でも、実際の所、これまでの人生で一番と言っていいほど俺は今物凄く、愛国心は強いと思うよ。


なんちゃってでも、王子だしね。


「父様には後で持っていきますね」

「うん、そうしてあげて。シリウスから渡した方が喜ぶだろうしね」

「そうですかね?ティーやスワロ達孫の方が嬉しいのでは?」


多忙で、どうしても今の時間空けられなかった父様に持っていく件について、俺としては孫の方が子よりも嬉しいはずかなと思ったのだが……父様や母様に孫が居るとか、相変わらず違和感しかないのが凄いものだが……そんな俺の考えとは裏腹に、レグルス兄様はどこか微笑ましそうに答えた。


「シリウスは歳の離れた子だし、父上も気にかけてるんだよ。大人びているからこそ、余計に色々背負わせてないかってね」


御歳10歳の俺だが、前世には無かったそんな親心が心に染み入る……うむ、俺もそういうのに気がつく大人にならねばな。


「学園ももうすぐだったよね。体には気をつけなよ」

「はい、ありがとうございます」


準備の合間をぬって、お米や醤油を配りに来たのだが……まあ、実の所ある程度は済ませているので、そんなに大変でもない。


自分で新しい人材を発掘出来るのは凄く楽しみなので、学園生活をフィリアと楽しみつつ青春を謳歌するとしよう。


そんなことを思っていると、ティファニーが物欲しそうな目を俺に向けているのに気がつく。


その視線の意味を気が付かない俺ではないので、義姉様に軽くアイコンタクトをして、お代わりのプリンをあげることに。


「今日だけ特別だよ?」

「――!うん!ありがとうおじちゃま!」

「ほい、スワロも」

「……うん、ありがとうおじさん」


何とも元気なティファニーと、嬉しそうに表情を緩めるスワロ。


我ながら姪には甘いものだが……一応、厳しい時もあるのよと言い訳をしつつ、和やかに食事を済ませるのであった。







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