第82話 宝探し
「こちらになります」
ヘルメス義兄様と別れてから、俺は闇オークション関係で押収してある品が保管してある保管庫へと案内されていた。
案内をしてくれる騎士さんは、ヘルメス義兄様が信頼してる直属の部下らしく、道中はヘルメス義兄様の語らなかった一連の頑張りについてそれは熱心に語ってくれた。
中々部下に愛されてますね。
「ありがとうございます」
鍵を開けて貰うと、俺はお礼を言ってから部屋に入る。
すると、非常に様々な品が並べられていた。
魔物の素材から、魔道具らしきもの、宝石類や貴金属類、幻クラスの薬草やいかにも曰く付きそうな呪いの衣服といったものまで幅広くあり、かなり大きな部屋のはずが狭く感じるほどだ。
「うーん、これはまた……」
「これでもかなり整理はしたんですね……」
俺が部屋の様子に苦笑していると、その騎士さんは苦々しい表情で中の品を見つめる。
真面目な人のようだし、こんな裏取引のような闇商品を見ると複雑な気持ちになるのだろう。
「本当に欲しいの貰っていいの?」
「はい、陛下からはシリウス殿下の気に入ったものを好きに持っていくように、と。可愛い義弟へのせめてもの贈り物だそうです」
何とも優しいお義兄様だ。
とはいえ、一つ一つ見て回るのは時間がかかりそうだなぁ……ん?
部屋を見回していると、あるものを見つけて視線を止める。
珍しい魔道具が並ぶ中で、それはひっそりと置かれていた。
簡素な箱に入っている、シルバーのイルカのようなモチーフのネックレス。
「これって……まさか……」
「何か気になるものがありましたか?」
「ええ、まあ」
よくよくじっと、ネックレスを見る。
すると、魔力とは異なる力を感じることが出来た。
所謂、精霊と呼ばれる存在の持つ精霊力と呼ばれるそれは、精霊にしか使えない特殊な力で、本来は人間には感知することも出来ない。
しかし、精霊に気に入られたり、認められた者はその力を感じることが出来るようになり、更に特殊な場合になるが精霊から加護を授かることもある。
かつて、英雄だった前世で俺は複数の精霊から気に入られて、加護を貰っていたが、その加護はこちらに転生しても失われることはなかった。
加護というのはそれだけ強力なのだが、そもそも精霊自体に会うことが人間には難しかったりする。
気まぐれな彼女たちは、時にイタズラをしたりはしても、基本的には人間を愛してるので、見えないように空気のようにそこに居るのだが、ごく稀に人の作った物などにも加護を与えることがある。
俺が見つけたネックレスからは、かなり上位の精霊の加護を感じることが出来た。
たまに、無理矢理精霊に干渉してその魂を閉じ込めるような悪魔な所業の曰く付きの品もあるそうだが、今回俺が見つけたのは純粋な加護によるものらしく、触ると手に馴染む感覚があった。
まあ、そもそもそんな真似を出来る人間は少ないのだが、稀に精霊に気に入られたことを悪用する輩も居るので、そのせいで人間にあまり良い印象を持たない精霊も居るそうだが、おおらかで優しい彼女たちは偏見などを持たずに接してくれる。
思えば、女神様がこの世界で一番初めに心配してくれたが、よくよく思い出すと俺を気に入って加護をくれた精霊からも何やら労りのようなものを貰ってた気はする。
まあ、実はかなり曖昧なんだけど……今思い返すとそうかなぁというレベルなので確証はない。
そもそも、それに気付かないレベルで追い詰められていたのだが……まあ、それはそれ。
(うん、そのうちお礼を言いたいかな)
そう決意すると、俺はそのネックレスといくつか気になったものを貰うことにした。
ヘルメス義兄様の好意だし、せっかくだから貰えるものは貰わないと。
そうして、少し予想外の事は起こったが、とりあえず婚約者や家族に携帯の魔道具を渡せてひと仕事終えるのであった。
うん、中々頑張った。
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