なんとワンダフル! コタロウの異世界ライフ

こんろんかずお

第1話 なんとワンダフル

「まてー、コタロウ!」


 ヒロシは俺コタロウを全力で走り追いかける。


 俺コタロウとヒロシは小さい頃から仲が良かった。


 血は繋がっていなかったが、ヒロシが赤ん坊の頃から今の小学一年生になるまで面倒を見た仲なのだ。


 最近ヒロシは成長して、走るスピードがまた速くなった。実際の兄弟ではないが、小さい頃から成長を見守っている立場としては微笑ましくもあり、嬉しいものだ。


 と、考え事をしていたら、後ろから大きなトラックがヒロシ目掛けて突っ込んでくるではないか!


 危ない!


 危険と判断した俺は、ヒロシに体当たりし…。


キキーッ! ドンッ…

 暫くの静寂の後、俺は意識が薄れていく中、ヒロシが泣き叫んでいる姿を見た。


「誰かっ、コタロウがコタロウがーっ!」


 よ、良かったヒロシが無事で…本当に…。


   ♢


 …ん? ここは?


 何やらあたり一面に白い空間がある。はて?


「ようこそ異世界ルマニアへ、私は女神アリナ。この世界の管理者の一人です。貴方は事故に遭いここへ転生されたのですよ?」


 不思議なことに俺の頭に直接声が響いてきた。


「え? あっ」 


 そう、なんと俺は立っていたのだ。二足歩行で。顔を触ってみるとツルツルだ。


「そう、貴方はここに人間として転生したのですよ?」

「えっ? 元の姿に戻してください」


 俺は必死になって訴えた。


「ごめんなさい、条件つきになりますよ?」

「お願いします!」


「…いいでしょう、ではとりあえずえいっと」


 なんと俺は元の姿の犬に戻れたのだ。


「うーんポメラニアン? いや、雑種ですか…」

「雑種言うな! あれ?」


 そう、犬の姿に戻れても喋れるのだ。


「とりあえず、好きな時に元に戻れる能力を付けときましたので、人間の姿と使い分けてください」

「おお、女神様ありがとう!」


 俺は尻尾をぶんぶん振り回し喜んだ。


「まあ…可愛い…あっと本題を忘れてました、うっかり」

「?」


「実は貴方にこの世界の魔王を倒して欲しいのですよね?なので人として転生させたわけですが…」

「えっ無理ですよ? 俺犬ですよ? 人であるヒロシがゲームをプレイしているの見たけど、ラスボスはつぇーて言ってコントローラー投げて壊してましたもんね? 俺の知能じゃ無理でしょ?」


「そこなのですが、実は手違いがあって…」


 女神から話を聞いたところ、転生者にはヒロシがなる予定だったが、俺がかばった関係で予定が狂ったとのこと。アレ? じゃあのトラックの動きがおかしかったのって…?


「とりあえず、俺元犬ですよ? 他をあたったほうが良くないですか?」

「そこなんですが、この異世界選抜は百年に一度しか行われないので、次を待つと世界が確実に滅んでしまうんですよね」


「ええっ!」

「後、この世界が滅ぶと貴方の世界との行き来できるゲートの封印が解かれことになります。そうなると結果ヒロシさんにも被害が及ぶことになってしまいますよ?」


「えっ? うーん…」

 

 俺の両耳はぐったり倒れてしてしまう。

 正直早く元の世界に帰りたかったが、ヒロシに害が及ぶのだけは避けたい。


「…女神様わかりました、では何か強力な武器防具及び能力を俺にくださいっ!この手の奴は何か強いやつが貰えるってヒロシが言ってましたっ」

「あっ…えーと大変言いにくいのですが…もう能力は授けられないのですよね」


「え」

「『本人が強く思う願いが一つ能力として授けられる』のがこの世界へ転生した時のルールなんですよね…」


「ええっ!」

「あ、でも大丈夫です。そこから能力が数珠繋じゅずつなぎで派生する仕組みになってますので…そう、アレ?」


 女神は何故かしばらく無言になっている。どうやら考え事をしているようだ。

 俺は暇なので尻尾をパタパタ振ったり、頭を掻いて待つことにした。

 

 それから待つこと三十分。


「あっ、えーとお待たせしました。ちょっと上司に相談してまして、特別にもう二つつだけ能力を授けます。『人間の姿になった時にサイズが合う服』と『どの種族ともコミニケーションが取れるスキル』を授けます。これで何とかしてください」


「えっ? 武器とかは?」

「…元々人間じゃないから授けられないそうです…上司達も喧嘩してて、もう何が何だか」


「ええっ?」

「すいません、後はマカセマス…私も事後報告とかしないといけないので、では良い旅を…」


 そして気が付くと俺はどことも分からない大草原に投げ出された。


「ふっふざけんなー!」


 俺の怒りの雄たけびは、大草原にキャンキャンと空しく響いていた…。












  








 




 


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