第42話

「いかがいたしましょう、売りますか?それともそのまま持ち帰って、どなたかのプレゼントになさいますか?」

 売りに来た冒険者があきらめたように小さくため息をついた。

「いや、売るよ。はー、レアものが出たと思ったのに。ハズレレアかぁ……」

 男が去った後に残されたレアなポーション。

 うわぁ、か、かわいい。

「お待たせいたしました。えーっと、続きですね。小銀貨4枚でいかがでしょうか」

「あの、あれが欲しいんですけど、ここで買えますか?ここは買い取りしかしていませんか?」

 さっきのレアポーションを指さす。

「いえ、買い取ったものの販売もしておりますよ。買い取り価格は聞こえてしまっていますよね。売値は、買取価格の倍が基本ですがよろしいでしょうか?」

 こくこくと頷く。

 売値が仕入れ値の倍なんて、なんて良心的なのだろう。だいたい、8かけだとか7かけだとかで売値はつけられることが多いのに。だから半額で売っても商品単体としての原価を割ることは少ない。ただし、人件費や家賃などもろもろの経費を考えると赤字になる。

 まぁ、とにかく何にも問題ないです。

「本当にいいのですか?直接あの人から買い取ればもっと安く手に入ったのに?」

 ジョジョリさんが不思議な顔をした。

 それから、後ろに並んでいた冒険者までもが声をあげる。

「そうだぞ、さすがに倍で売るなんてぼったくりすぎだって怒ってもいいと思うぞ。坊主が子供だからってだまそうとしてるんじゃないのか?」

 フィーネさんがむっとした顔をする。

「あの、待ってください。これはレアなんですよね?ボクは子供ですから、逆に何もしらないと足元を見られて買取価格で言われた値段よりも高く売られる可能性もあります。ほしいという気持ちを見せると、値段を吊り上げる人がいるのです。それから、後々、ちゃんとお金を支払って売買したにもかかわらず、何の証拠も残らないために、ボクが盗んだと誰かに嘘をつかれる可能性もあります。もっと高く売れそうだと気がつけばお金を返すから返せと言われることもないとは言い切れません。他に何人か欲しい人を探し出して競売させることもあるかもしれません」

 ジョジョリさんが唖然とした顔をしている。

 また、しゃべりすぎました。

「あの、ちゃんとした人を介して取引したほうが安全だと、ボクは思っていて、えっと、もろもろの保証料込だと思えば、高いとは思わないです。その、ちゃんと鑑定もされてますし……だまされて買うこともないですし」

 恥ずかしくなってうつむく。

「ほら、ジョジョリ、聞いた?あなたも堂々と売るときは買い取り価格の倍で売ればいいの」

 フィーネさんの言葉にジョジョリさんが頷いた。うん、二人の恋が成就すれば間違いなくかかあ殿下になりそうです。

「なるほどな。言われてみればそうかもしれないなぁ。坊主は賢いなぁ」

 後ろの冒険者に褒められました。

 賢くはないんですけどね。日本では怪しげなところから買うのは危険だというのは常識で。転売屋だとか不法に値段を上乗せする人も普通にいますし。もし、不良品だった場合の商品保証まで考えると、やっぱりきちんとしたところで買ったほうが安全なんです。

「では、レアポーションお買い上げが銅貨8枚、買取価格の小銀貨4枚から引いてもかまわないかしら?」

「はい。小銀貨3枚と銅貨2枚でお願いします」

 フィーネさんが驚いた顔をする。

「計算、早いわね」

 そうでしょうか?

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