第4話
「先輩の女性の好みは?」
「そろそろ手伝ってくれ」
俺は止めていた目と手を動かし始めるが、柳沢は手伝うそぶりを見せなかった。
「先輩はできる子なんで一人でも大丈夫です。というか、今やってる作業のお手伝いポイントが分かりません」
「今すぐ隣の備品室に行ってそこのリストに数を書いて来てくれ」
「先輩は出来るお方なので一人でもこなせます。大丈夫。応援してます」
要するに手伝いはしないらしい。
今年の生徒会はこんなんばっかだ。副会長の柳沢を筆頭に会計の倉石、書記の藤林、庶務の橋本……誰も事務作業を手伝ってくれない。
一人でやる量じゃないはずなんだけどなぁ……。
まさか、彼らから嫌われているのだろうか……?
あまり気づきたくなかった事柄に俺はそっと蓋をして、作業を黙々と続ける。すると、目の前に座っている柳沢が真剣な表情を浮かべていた。
「先輩の、女性の好みは?」
「雑務を手伝ってくれるような優しい後輩」
「そういう中身の話はしてません。あと、ちょいちょいアタシを口説くのやめてください。口説くなら口説くでもっと感情込めて」
注文の多い奴だ。
「それよりも!先輩の女性の好みですよ女性の好み!いいですか?女の好みを聞かれて“性格が良い人”なんて言ってたら彼女どころか結婚相手さえ見つからないですよ!」
「そうか」
「もっと興味をもって!」
ようやく再開した作業を泣く泣く中断して彼女の方を見る。真剣なまなざし、少しいら立って見える眉間のしわ。なにが彼女をそこまで熱くさせているのかは全く理解できない。
「見た目の話を聞いているのか?」
「当たり前じゃないですか。男なんて女の顔か胸か尻か生足を見ているような生き物ですよ」
否定したいけど、さっき胸に視線をやっているので何も言わない。
「そうだなぁ……」
この間見たアニメのキャラクターでもいいか。割と好きな性格してたし。
「ちなみにアニメのキャラクターから容姿を持ってきたら先輩の事をこれからオタク生徒会長と呼びます」
別にそれでもいいけど。
というか、最近じゃあアニメ見てない方が珍しいくらいな気がする。俺の周りだけか?
「黒髪」
「ほぉ?ショートですか?ロングですか?」
「ロングだな」
「イメージ通りの古風な感じが良いと?」
「まぁ、そうだな。あとは割と身長が高めがいい」
「カッコいい系ですかね。胸は?大きい方?」
「いや……まぁ、身長あるから胸あった方がバランスは良いんだろうけど、小さい方が好みかもなぁ」
「体の奥底にロリの魂を宿してたりしません?いや、疑っているわけじゃないんですよ?」
身長ある方が良いと言っているのに胸が小さい方が良いと言っただけでこの反応。どういうことなんだ。
「勝手にロリコンにするな。身長は高い方が良い。俺と同じくらいか少し低い程度かな」
「身長180cmの女なんてどれだけ自分の可能性を掃いて捨ててるんですか。バカですか。女の子でそんな大きい子はほとんどいませんよ」
なんで身長の話だけでそこまで言われるんだろう。
「いや、理想の話だろ?」
「小さいのもいいと思いますよ?ほら、150cmくらいとか」
さっきロリコン扱いしてきたくせに。その手には乗らないぞ。
「流石に身長差がなぁ。並んで歩いた時に兄弟か、親子に間違われないか?」
「いや、先輩の見た目で親子に間違われたら女の子の方がどんだけロリ顔って話になりますよ」
どういう意味だ。いたって普通の人間顔だぞ俺は。
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