第24話
ナイフの刃が見えてヴィオラは頭が真っ白になる。何が起きているのか理解が出来ない。何故アンナリーナが、ナイフを握りそれを自分へ向けているのか。
時間がゆっくりと感じた。アンナリーナがこちらへ喚きながら向かってくる。逃げなくちゃ、だがどうやって?
ヴィオラは、窓側へとベッドから転げ落ちた。力なく床に転がると、どうにかして腕だけの力で窓の方へと這いつくばっていく。
アンナリーナはヴィオラがいなくなったベッドを何故かナイフで切り裂いている。頭がおかしくなった様にしか思えない。だが、今の内にどうにかしなくては……。
ヴィオラは何とか窓辺まで辿りつくと、今度は鍵へと手を伸ばす。だが、この体勢からは鍵の位置まで手を伸ばしてぎりぎりだ。
「っ……」お願い届いてっ……。
ガチャッ。
金属の音が響き、鍵は開いた。そして窓を開けるとテラスへと出る。そして、思った。頭が混乱してテラスへと逃げたが、これ以上逃げられない。なんて自分は、莫迦なのだと。
「ねぇ、何してるの」
ヴィオラがバルコニーの格子を掴んだ時、背後からそう声が聞こえた。
ヴィオラの身体はビクッとなり、そして振り返る。
「っ……」
「お姉様」
思いの外アンナリーナの顔が近く、ヴィオラはその事に驚き声にならない悲鳴を上げる。少し動いたら互いの鼻先が触れそうな程の距離だ。
ヴィオラは目を見開き硬直し、アンナリーナをただ見遣るしか出来ない。そして、アンナリーナの様子に眉を寄せる。
先程までは怒りに震えた様子だったのに、今は真逆に満面の笑みを浮かべていた。手元を見ると、ナイフは握られていない。
その事に、ヴィオラは胸を撫で下ろすが……。
「っ……やめ、て」
次の瞬間、アンナリーナは勢いよくヴィオラの首を両手で掴むとそのまま締めてきた。
「くる、しっ……」
「お姉様がいけないのよ?そもそもお姉様が生まれてきた事が間違いなのよ。お母様も何時も言ってたわ。「あんな子、産むんじゃなかった」って。フフ、だから私が……今、ラクにしてあげるからね?フフ」
このまま、私は死ぬの……?
段々と、意識が遠のいていく。きっと、このまま意識を手放してしまったら2度と目を覚ます事はないだろう。
……ミシェル、もういいよね。私もそっちに逝って、いいよね。こんな人生はもういや。だから……。
『姉さん』
瞬間、頭の中にミシェルの自分を呼ぶ声が響いた。
「痛っ」
ヴィオラは力の限り手を、アンナリーナへと振り下ろした。その手はアンナリーナの目に直撃し、爪が引っかかった頬からは血が流れでている。
「何すんのよ‼︎」
「うっ……」
「もう、いい。面倒臭い。最初からこうすれば、良かった」
アンナリーナは小柄で軽いヴィオラを掴み持ち上げると、格子に押し付けた。
「フフ、さようなら……ヴィオラ、お姉様」
身体がフワリと浮き、次の瞬間にはヴィオラは格子を飛び越えていた。最後に見えたのは、満面の笑みで自分の名を口にするアンナリーナだった……。
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