第526話 しょめいきじ



 全国紙の一面を使った大きな記事の最後に(〇◇△☆子)とある署名を見て、


 ――ああ、彼女もベテラン記者になったんだね、あのときは小娘だったけど。


 しばらく感懐に打たれていたカヨさん、新聞記者も因果な職業だよね……と。


      *


 当時、取材に来てくれた彼女は20代半ばぐらいで、おとなしいけれど芯の強そうな印象の女性で、書いてくれた記事にも誠実が滲み出ていた……ただ1点を除いて。


 それは、人生も仕事も経験を積んだ現在なら、決して書かないはずの1点で……。

 その証拠に、共通の知り合いの同僚記者を通じ、感想をたしかめて来たので……。


 そのうちに要職に就くであろう彼女に、あのときの1点をいまどう思っているか、取材対象が傷つくと思わなかったのか、訊いてみたいなと思っているカヨさんです。







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