第416話 まんぼうせんせい
中国・胡耀邦総書記(当時)の全面的な協力を得て成った一書である、と同書の「あとがき」に明記されている山崎豊子さんの大作『大地の子』にのめりこむ余り、自ら苛烈な残留孤児の人生を追体験した心持ちに陥り、笑いを忘れていたカヨさん。
かような心理状態では夏を乗り越えられないと、心機一転を目指して選んだ本は、ご生前に少し袖振り合ったご縁がある北杜夫さんの『どくとるマンボウ青春記』。
これまた若いころから何度目かの拝読になりますが、内容をすっかり忘れていて、軽快なユーモア小説とばかり思いこんでいたのが、実はこれも戦争文学の一端であることに気づき、なんたる巡り合わせかと、自認する動物的勘が恐ろしくなりました。
*
それはともかくとして、多くの読者がhighlightしている何か所かに、大いに共感。
――賢からぬ人間が権力らしきものを握ると実に怖ろしい。
喜劇と悲劇、滑稽と悲惨が極めて接近している、あるいは表裏だ。
――本物の信念は余裕を生み、余裕は確たる思考、計画を生むものだ。
まるでカオスの極限たる現代社会を言い当てているようではありませんか。(^_^;)
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