第116話 つきみそう



 

 

 

 カヨさんが川沿いの道に出たとたん、とぼとぼ歩いて行く茶色い中型犬が!

 うなだれたうしろ姿から首輪は見えませんが、迷い犬、それとも、捨て犬?


 どうしよう、保護したいけど、リードの代わりになる紐は持っていないし、腰痛&モートン病の身で、あれだけの体重は、とてもだっこはできそうにないし……。


 一瞬のうちにいろいろな考えが脳裡をよぎり、困り果てていたとき、ひょっこり前方の物かげから現われたオジサンが犬を呼び寄せ、首輪にリードを付けました。

 

 ――な~んだ、ちゃんと飼い主さんがいたのか。

 

 ただ、むかし、仕事で車を走らせていたとき、道端の月見草のかげから現われた首輪のない、被毛がぼさぼさの中型犬を、前後の車に迷惑だからと身勝手な理由をつけて保護しなかった……あのワンさんに、あらためてお詫びしたカヨさんです。

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