第15話 背中に書かれている事
サロンは安旅籠でもよく眠れず、かなり朝早くにミゾラ診療室にやって来てしまった。
玄関の鍵は掛けられていない。開けると待合室は無人で静かだった。まだあの青年も寝ているだろうか。
静かに中へ入り、診察室の戸を開ける。
するとサロンは驚いて後ろに転けそうになった。本の山の合間でまんじりともせずに机に向かい、険しい顔をしたあの青年が飛び込んできたからだ。
本当に寝なかったのか……?
サロンはじっと見つめる。こちらに気付いているのか、いないのか。
「おはよう御座います」気付いてる。
「おはよう。どうだ。分かったか」
「はい。分かったには分かったのですが。間違い無いとは思います。しかし、それによって分からない事が増えてしまって」
「何?」
「サロンさんの背中にはあの
「え?どういう事だ?」
「そうとしか考えられません。
「つまり?」
「
知っているとも。村を襲った奴らが探していた、亡きメッシリアの国宝。
「メッシリア王朝の国宝にして
「よく分からない。その力は何かに移せると?」
「
「本質は込められた魔導にあると?」
「そうです。
「そうか。あの時、それが手に持つ刀剣に写りという事は、力が発動しそうになった。だから頭が……」
「記憶が飛びかけたのですね」
「ああ。それに……俺が目覚めた時……そうだ。奴らが探していたのは俺自身だったのだ」
「よく分かりませんが、それをこのマリバルで知られるのはまずい。このマリバル王国の欲深き国王はその
「あの村は俺のせいで滅ぼされたのか……」
「帰って来たら先生に相談してみましょう。彼も昔は偉大なる魔導士として活躍した方。どうすべきか知恵があるでしょう」
「俺は……メッシリアの人間なのか……」サロンは部屋の隅を見つめていた。
「そのご容姿、そして背中の
「託された者」サロンは思考が宙に浮いてしまっていた。
「とにかく誰かに悟られないように。それとコントロールして下さい。その力を使おうとしてしまえばまた記憶が飛びますよ」
「あ、ああ」ゴザイの布が頼りだ。あの家でも守ってくれた。
玄関がけたたましく開いて誰かが駆けてくる音。サロンは驚いて過剰に身構える。
政府に追われている……。
しかし診療室に飛び込んできたのは商売人の格好をした男だった。
「キロ!キロ!」青年の名前らしかった。その男は血相を変えている。
「おやっさん。どうしたの?」キロはフラフラ立ち上がる。
「先生が!先生が遺体で見つかった!」
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