2020/12/21作 核家族かく分かれり

 酉暦300X年、大地は枯れ海も干からびた荒野の地に、未だ人類は存続し続けていた。

 度重なる戦争、難民の流入により発生する飢饉、神の鉄槌とも思わせる自然災害が続き、地球は汚染され続けていた。

 だが短いスパンでしか生きられない人類は元気であった。争いは母なる大地を越えて、天上の世界へて至るもそれでも飽くなき欲望は潰えない。

 住む場所を、名誉を、金を、油を、水を、食料を、そして理由を、求めて戦い続けた。


 それこそ永遠ともいえる浪費期間を賄うエネルギー需要に答えられなくなった人類が生み出したものこそが、国家の底辺を成す家庭ないし核家族を分裂させた際に発生する熱から発電する《核家族発電 Nuclear Family Power》である(以下NFP)。


 NFPを行うための核家族は以下のようになっていなくてはならない。

   1)夫婦のみ(計2人)

   2)片親と子供のみ(計2人)

   3)夫婦と子供(計3人)

 特に3)は一度目のNFPの後に1)または2)の形態を取ることから、燃料効率の良い核家族である。

 「今からのち、一家5人あらば――」と始まる一節に倣い、兄弟姉妹を含めたエネルギー変換を模索する研究者もいるが、


 それでは実際に核家族発電の一例を見てみよう。


「わたし! しばらく家に帰らせていただきます!」

 これは1)または3)における奥様(最大限配慮した記述)が出奔する様である。この場合は実家に帰ってしまうので、変換率が落ちてしまう。しかし、例えばこれが実家でなく出家である場合や、興信所で燻る怪しい男の元へ走るものならば、その変換率は理論上最大となる。

 また、3)の場合子供が連鎖的に弾けていく場合、相乗効果が得られる。これを《一家離散》と呼ぶ。


 次に紹介するのは、貴重な例だ。

 太古の昔に名を連ねるエディプスは父を憎み、母を愛するあまり瘤ができてしまった(最大限配慮した描写)。この時、一つの核家族が分裂し(父への反抗)、同時に新たに核家族が誕生する(瘤)。ここから発生するNFPの半永久機関は通称エディプス・ケースと呼ばれている。


(スペース・ニュー〇ン 神無月号70967ページより抜粋)


お題:【家族】をテーマにした小説を1時間で完成させる。

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