第3話:南北朝時代
亜人族の
そしてスペアとして機能するはずの庶家が互いに正統性を主張する。これにより、聖地は2分化し、それぞれに
だが、このシステムにも欠点があった。南北朝に分かれた庶家はそれぞれが本家となってしまったからには、どちらにも正統性が存在することとなる。北朝は魔族・亜人族が支援し、南朝はニンゲン・エルフ族が支援する形となった。だが、どちらか一方を廃嫡するまでには至らずに、今日まで混乱の種を残すこととなる。
そして、イヴァン=アレクサンドロヴァの言う通り、
今から30年前に南朝では
「魔族・亜人族が推す北朝に次帝を任せるのは、今までの慣習から考えれば妥当なのは認めるのでござる。だが、交代制と言うのであれば、新規に興したニンゲン族が擁する南朝の分家にも次帝になる権利が存在するはずでござる」
これは詭弁と言っても過言ではなかった。魔族・亜人族から見れば、どちらも南朝であるはずなのにだ。それなのに、南朝同士で
だが、民心の安寧よりも、高みから各種族を支配する者たちの視点は違っていた。つつがなく次帝選抜を決めることで、世の乱れを最小限に抑えることこそが肝要であるという結論に達していたのである。確かに有能な人物がテクロ大陸の象徴となれば、民心は穏やかになるのであろう。だが、そうすることによって、北朝、南朝どちらかに有能な人物が続くことになれば、それは要らぬ争いを産む結果となる。だからこその交代制なのである。
そして、それに今更になって異を唱えるべく、30年前から準備を
「おーほほっ! ハジュンとイヴァンの苦々しい顔を見ていると、ワタクシ、あそこが潤! と濡れてきそうですわよ!」
アンジェラ=キシャルは孔雀羽の扇子で口元を隠しながら大笑いするが、あまりにもの痛快このうえないといった感じで笑うために、その扇子の存在は無駄となってしまっていた。ハジュン=ダイロクテンとイヴァン=アレクサンドロヴァは彼女の色気香るぷっくりとした唇を見て、余計に腹立たしい気持ちになってしまう。そして捨て台詞の如くにイヴァン=アレクサンドロヴァが口を開く。
「クッ! 言わせておけば、いけしゃあしゃあと……。その大きく開いた口に私の汚い肉棒をねじ込んで、無理やりその口を塞いでやってもいいのだぞ!」
「あらあら? 貴方の短小包茎のおちんこさんで、どうやってわたくしのブラックホールを塞ぐというのかしら?」
エルフ族の女王という存在があまりにも口汚い返しをするものだから、彼女の右隣りに立つ彼女の補佐が
「アンジェラ様、今のはいけません。ブラックホールははしたなさ過ぎます。そこはバキュームと言うべきです」
エルフ族が支配する国の宰相であるバーラ=イシュタルが厳かな雰囲気を醸し出しならが、彼女に訂正を促すこととなる。彼女は
「ははっ! バーラ=イシュタル殿は大変でござるな。宰相が
ニンゲン族の首魁であるタムラ=サカノウエが朗らかな笑顔でバーラ=イシュタルを褒めたたえる。彼の言葉は率直そのものであった。それゆえにストレートにバーラ=イシュタルにの左胸に突き刺さる。バーラ=イシュタルは少しだけ顔を赤らめつつも、自分に賛辞を送ってくれたタムラ=サカノウエに対して、軽く会釈するのであった。
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