(二)-2

 警察に被害届けを出そうとしたが、そもそも絵を所有していた証明ができなくて断念した。所蔵品のリストなどがあれば良かったが、大二郎氏はそこまで自分のコレクションの管理を徹底しているわけではなかったのだ。

 そういう事情で、その絵がいま、どこにあるのか、その所在を突き止め、できれば取り戻して欲しい、という話であった。

 さらに聞くと、その業者は「骨董商店石見屋」であった。業界内では有名で、美術品についての専門知識を駆使して、芸術の素人から美術品をただ同然で買い集め、高額転売しているという業者だ。その手法が詐欺ではないかと思うほどなので、業界内の人間なら、名前を聞くと思わず身構えてしまう存在だった。しかし、南平氏のような芸術に疎い人なら、引っかかってしまうのも無理はなかった。

 そのため、私は多少の謝礼を受け取る代わりに協力できるところは協力することにした。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る