新しい常識②王都への帰還

「それでは、王都への帰還する!」


 リュシの号令で馬車が動き出すと沿道の両サイドから集まって来た人々の歓声が上がり、パレードのような感じで街の端まで進んで行った。その後は城壁までは静かになり手を振っていたみんなも落ち着いて座席に座っていた。行きの馬車よりも豪華で大きな馬車が用意されおり、冒険者の護衛まで付いているので王都までみんなゆっくり出来そうだ。まもなく城壁というところで馬車が一度ゆっくりと止まった。何事かと思い前方を見ると、目の前には数百人もの騎士たちが綺麗に整列していた。


「勇敢な若者達に敬礼!!」


 指揮官の号令で城壁まで数百人の騎士達が胸に手を置き、感謝の敬礼を行っているなか再度馬車はゆっくりと城門まで進んで行った。城門ではリュシとマヌエーラの両親共に待っており手を振って見送ってくれた。


「俺らすごい体験したんだよな?」


「そうだよ、勇者様と一緒に最前線で戦うとか普通の子供では絶対ないよな?」


「今までだとダブルの時点で前線どころか最後尾の雑用部隊決定だったからね」


「トラーオには感謝しかないよ。役立たずと自分でも思っていた魔法が、攻撃にも使えるなんて思ってもみなかった。こんなに鍛えてくれてありがとね」


「だよな、今までは卒業後は火魔法使いの下働きみたいな未来しか見えなかったけど、今では同様か負けないとまで思えるようになってる。これはやっぱりトラーオ君のおかげだね」


 みんながお礼を言ってくるので、少しくすぐったくなってきた。


「いや、みんなが努力した結果だよ…… 本番でお腹壊して出られなかったし……」


 ん? なんでみんなニヤニヤしながらこっちを見るの? もしかしてバレた?


 冒険者の護衛もいるので夜はみんなゆっくりと寝ることが出来た。翌日からは出発前に魔法の練習をしたり毎日メンバーを変えて馬車に乗ったりで、行きの少し緊張感のある旅とは違い楽しい3日間であった。


 王都に近づくと道路を通行する馬車も増えてきて、ここ数日スタンピードで動けなかった商人の馬車等が増えてきてとても活気に満ちているように見えた。城門が見えてきたが、まだまだ魔物の残党がいるので城門の全ては開いていないのでかなりの列が入城の為に並んでいた。


「これは入るまでに結構またされそうだね」


 トピアスがうんざりそうにため息をついた。


「大丈夫、今回はすぐに入れると思うぞ」


「リュシ、本当?」


「今回は前触れも冒険者ギルド経由で出しているし、この馬車は子爵家の馬車だから最低でも貴族専用門からは入れるだろう」


「なるほど、じゃそんなに待たなくていいんだね」


「まっ、もう急ぐ旅でも無いからのんびりいこうよ」


 しばらくすると門番からの連絡で最優先で入城できる事になった。豪華な馬車で学園へ戻ると他のクラスから何か言われる可能性もあるので、オーフライ家の屋敷に一度行ってからそこからは歩いて学園に戻る事にした。


「明日と明後日は学園はお休みです。明々後日からは学内対抗戦がはじまりますので、二日間しかありませんがゆっくり体を休めてください。なお明々後日の学内対抗戦は王立競技場で10時からですので9時半までには控室に集合です。王族の方も来られる可能性がありますので絶対に遅れないようにしてくださいね。今回の遠征は本当にお疲れさまでした」


 ナタリー先生が最後を締めて解散となった。さすがにみんな疲れていたらしく寄り道もせずに寮へ戻って行った。


 俺はちょっと買い物して帰ると伝えてから、王城にて宰相と今後の打ち合わせをしに転移した。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る