忍び寄る危機⑦日本の最近を聞くにゃ

『ただいまにゃ!』


「あれ? 戻らないんじゃ?」


『愛しのかっちゃんが優秀すぎてもう終わったにゃ』


「何それ! じゃ晩ごはんも食べて行くんでしょ?」


『食べるにゃ、新田は2時間後に戻ってくるにゃ』


「じゃ何が食べたい?」


『向こうで食べられない魚や牛肉が食べたいにゃ』


「わかった、じゃそれまではどうするの?」


『とりあえずまりのと神社とか近所をブラブラしてくるにゃ』


「はーい、じゃ気をつけてね」


 まりのを探して神社へ行くことを伝えると、服は普通の服と巫女さんとどちらが良いか聞かれた。今日はお忍びで見にいくから普通の服で良いと言うと、着替えてくるから10分待ってと言われ、その間は家の近所をブラブラしているからといい、家の外に出てみた。

 以前より確かに空き地も増えたり人通りは少なく、明らかに警備担当のような目つきの人達がうろうろしていた。


「とらちゃんおまたせなの」


 まりのは帽子をかぶり、Tシャツにハーフパンツの姿で出てきた。


『じゃ行くにゃ!』


「はーい!」


『最近は変なのに絡まれないかにゃ?』


「最近は全然大丈夫なの、梢ちゃんとかも最近は誰も来なくなったって言っていたの」


『良かったにゃ、梢ちゃんも元気かにゃ?』


 梢ちゃんは上条梢といい、以前エリクサーを渡して余命宣告受けていた子供を全快させてしまって、しばらくはその原因究明にいろんな人が接触して来ていて大変そうだったまりののお友達だ。元製薬会社の鹿野とかにもガードを頼んでおいたのでそれが功を奏したのだろうか?


「今日も神社にきているかもなの。病気が治って放課後は神社で猫ちゃん達と遊ぶのが梢ちゃんの日課なの」


『じゃ神社で会えるかにゃ? 動物の保護はどんな感じだにゃ?』


「神社にそのまま捨てて行くような人はいないけど、保護できるように作った預けいれケージには置いて行く人はいるの、でもちゃんとお手紙があったり食べ物をも一緒に入れてくれるから死んだりするような動物はいないの」


『そっか安心したにゃ』


「猫神神社の動物は人気があって引き取りてはすぐにあるから今の所は問題ないの」


 あれだけ奇跡のような事を起こせば、ここの動物に何かしたらとんでもない神罰が当たるとみんな思っているんだろうな。とりあえず犬や猫の保護は進んでいるようで安心した。まりのと学校の事なども聞きながら歩いていくと神社についたが、以前の神社とは全然違う様相の神社がそこに建っていた。


『にゃんだああああ!! こんな鳥居とか階段とかなかったにゃ?』


「ママの話だと、すごい寄付が入ってきてるので鳥居を建てて、足が悪い人も登りやすいように階段とスロープを整備したって言ってたの」


『そうにゃんだにゃ……』


 境内に着くとそこはやはり以前とは違い本殿以外の建物があり、奥には動物たちの預かり用の建物が数棟建っていた。スタッフはおそろいのTシャツを着ているようで、知らない顔の方が多いくらいだった。

 まりのが境内を歩くと手を振ってくれる人だけでなく、最敬礼する人や手を合わせて拝んでいるような人も結構な人数がいた。


「まりの様、そのお猫様は猫神様でしょうか?」


 少し年配の女性からまりのが声をかけられたが、エッ? まりのって様扱い? お猫様って? まりのってメチャクチャ敬われてない?


「うん、今日はとらちゃんも一緒なの」


「やはりそのお猫様が猫神様なのですね……」


 いきなりすごい勢いで手を合わせて拝まれてしまった。それを見た人たちがどんどん集まって来ては手を合わせては念仏まで唱える人も出てきた。


『にゃんだああ!! これは困ったにゃ』


 まりのがいきなり両手を上げた。


「猫神様の言葉を聞くの、猫神様は猫神様を敬うのでは無く、今いる家族や周りの人に優しくするの、さらに余裕がある人は動物だけでなく困っている人や国に手を貸して上げるのが猫神様が望む世界なの」


 その言葉を聞いて、ようやくみんな解散して離れていったが、目線ではチラチラと見られている気がする。


「とらちゃん抱っこする?」


『お願いするにゃ』


 大量の人垣で踏まれるのも嫌だったのでまりのの腕の中に収まる。周りをみると明らかに警備っぽい目付きをした人が5人程近くにいて、さらに100m以内には10人程警備がいる気配がした。これだけ警備がしっかりしていれば問題はないだろうな、更に言えば加護のネックレスとかも持たせているから全く心配はしていない。


「まりのちゃーん」


 少し離れたところからまりのを呼ぶ声が聞こえた。


「あっ梢ちゃんだ! 梢ちゃーん!」


 梢が走ってきてまりのに抱きついて来た。


「猫神様もいる!」


「今日は久しぶりに猫神様も来たの」


「猫神様ありがと」


 そう言いながら梢が俺の頭を撫ででくれる。


「猫神様がいなかったら梢はもうここにはいなかったと思う。本当にありがとう」


 後ろから梢の母親も追いついて来て、俺の頭を撫でながら涙を流しいた。


『梢に気にするなと言ってくれにゃ。思い切り遊んで勉強して楽しく過ごして欲しいにゃ』


 基本念話はまりのしかしないようにしているので、まりの経由で梢に伝えてもらうようにお願いした。


「猫神様からの伝言で気にしないでって、梢ちゃんが沢山遊んで勉強すればそれが猫神様が喜ぶことなの」


「うん! 沢山勉強して私のような病気を治すお医者さんになるんだ」


 梢は目をキラキラさせながら俺に将来の夢を語った。




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