日本からのお土産②今後の不安材料

「タイガ様おかえりなさいませ」


 王城の自室へ転移すると、さも当然というようにリリアーヌが迎えてくれた。もう何も考えまい……


「ただいま、オーフライ領はもしかすると2ヶ月後くらいにまずい状態になるかもしれない。陛下へはまだ報告しなくても大丈夫そうだが宰相には伝えておきたいのだが、まだ大丈夫かな?」


「確認して参ります」


 ちょっと真面目な顔で言ったのでいつもの掛け合いも無くリリアーヌも真面目モードで対応してくれた。


「宰相の方はすぐにお会いできるとの事で,ちょうどお見かけしたロマーノ王子にもお話をしましたら王子もご同席されるそうです」


「わかった。ありがとう。宰相の部屋でいいの? それともロマーノ王子の部屋?」


「宰相の部屋でお願いします」


「わかった」


 宰相の部屋へ付くとノックの前に護衛の騎士がドアを開けてくれた。


「ハーラルフ様、夜分遅くにすみません」


「いやタイ…… トラーオ殿の話であればいつでもかまいません。むしろ早めに知っておかないと後で大変な事になることが多いので……」


「いやいや、そんなトラブルメーカーじゃあるまいし……」


「魔法の簡単な実験とか言って森を一つ吹き飛ばしたのはどなたでしたか?」


「あっ…… うっ…… あれは本当にあんなに大きな魔法だとは……」


「とにかく些細なことでもご報告お願いします」


「そうですね……」


 そんなやり取りをしているとロマーノ王子がラフな格好で現れた。


「こんな格好ですみません。もう寝る直前でしたので」


「いやいや、全く問題ありませんし敬語を使わないでください」


「そうは言っても、トラーオがタイガ様と知っている以上なかなか敬語は抜けないかな?」


「普段から慣れておいてもらわないと、どこでボロがでるかわかりませんから……」


「善処しよう……」


「ところでオーフライ領での魔物氾濫スタンピードですがペイロンの話では2ヶ月後くらいに起こる可能性が高いそうです。よほど同時に数箇所から攻撃されなければなんとかなるとは思いますが…… 念の為王都でも避難方法の周知をお願い致します。ペイロンから定期的に情報は届きますのでそれを元に冒険者ギルド経由でオーフライへの討伐依頼や避難民の護衛依頼を出してください」


「わかった。それでオーフライはどの程度被害がでそうなんだ?」


「ペイロンからの連絡が早ければそんなに被害は出ないでしょうが対処が遅くなればそれなりには被害が出る可能ですは高いですが、一番怖いのはこの機会に進入路とは違う門から他の国から襲撃されると怖いですね」


「その心配もせねばいかんな」


「明日からFクラスでいろいろな実験をしたいと思いますので、2か月後くらいには結構使えるクラスになると思いますよ」


「タイガ様、あっ!トラーオ君何をしようと思ってるの?」


「王子やクリス様に教えた事をもう少し具体的に見えるような形で理解してもらおうかと思っています」


「あの酸素や重力っていうやつ?」


「そうです。向こうへ戻れるようになってそれらを理解しやすくできる物を色々持ってきました。王子とクリス様にはお時間を取ってもらってちゃんとお教えしますね」


「それはありがたいが、どの程度を目標にするんだ?」


「そうですね、Fクラスだけでスタンビート止められるくらいには鍛えたいです」


「トラーオよ、大丈夫なのか?」


「宰相の心配するような事はしませんから、森を焼き払ったり大穴を開けたりはしませんよ」


「そういう心配ではない、他のクラスとの兼ね合いは大丈夫なのか?」


「それは問題ないです。ぐうの音も出ないように叩きますから」


「ほどほどにな……」


「中途半端では後が困りますのでFクラスは徹底的に鍛えてロマーノ王子に任せます」


「えっ? 僕ですか?」


「そうですね、直接の部下にしていただければ誰も文句言えないでしょうし、ロマーノ王子にとっても最強部隊が手に入るんですよ? あの使えない魔導士達と違って……」


「使えない…… 」


「ええ、あれは駄目ですね、広域魔法を1回か2回でへばって使えないとか、それを防がれたら終わりですし、あんなのは実際には使えないです。だから魔王討伐には連れて行かなかったんですし」


「とりあえずトラーオ君のやり方をお手並み拝見といきましょう」


「そうですな、トラーオのやることを考えても疲れるだけですから」


 なにげに宰相の評価がひどい……


「スタンビートをなんとかするためにもがんばりますよ」


 宰相たちとの話も終わりリリアーヌに挨拶をして寮へ戻ってベッドへ入った。



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