魔法学園入学編⑨授業が秒で終わりました。

 ロッソさんから寮内での注意点や禁止事項の説明も終わり、寮内の掃除当番を決めたりして午前中が終了した。午後からはいよいよ授業が始まる。最初の1ヶ月は基礎魔法として全ての属性の魔法を習い、属性が無くても、それらの属性魔法の種類や弱点などを勉強する期間になっているそうだ。その後はクラス関係なく属性毎にカリキュラムが組まれているとロマーノ王子から聞いていた。


 始まりの鐘がなり、みんな椅子に座り先生が来るのを待っていると、教室の前のドアがガラッと開き神経質そうなメガネを掛け真っ赤なローブを羽織った男性が入ってきた。


「Sクラスの担任のステファンだ、5月の対抗戦までにこれらの教科書を読んで全員火、水、風の魔法を第2ランクまで使えるようになっておくことだ。それから対抗戦ではFクラスはSクラスと対戦する。それに負けたらお前らはその後はSクラスの従者として3年間過ごしてもらうからな。良いな」


 クラス全員の目が点になっている。教科書読んで第2ランクまで覚えろ? 対抗戦で負けたら従者? 学園長の言っていた平等はどこにいった?


「先生、質問があります」


 思わず質問してしまった。


「なんだ?」


「学園長は入学式で、全てのクラスは平等だとおっしゃっておられましたが、従者になるっていうのはそれに反するのでないでしょうか?


「ハッハッハ! あれを真に受けているのか? 平民はどこまでいっても平民なんだよ、さらに言えばシングルでない魔法使いはカスだ、貴族で火魔法シングルが一番なんだ。お前らごときに大事な時間と金は掛けられないので勝手に教科書読んで覚えとけ」


「それでは他のクラスの人もみんな5月までには3属性の魔法が2ランクまで使えるようになるんですか?」


「あ、あたりまえだろ!他のクラスはお前らより優秀なんだから」


「最後にいいですか?」


「その前にお前の名前はなんだ?」


「僕はトラーオと申します。全属性持ちの平民です」


「なんだ、カスか」


「先程の話をまとめると5月まではFクラスは今後の授業は全て自習をして、自分たちの力だけで3属性を2ランクまで使えるようにならなければいけないということですね。そして対抗戦でSクラスに負けたら3年間従者になるで間違いないですか?」


「それで間違いないぞ、お前らだけでなくてこの出来損ない教師は手伝っても構わんぞ」


「それでは、対抗戦でFクラスが勝った場合にはSクラスの人が僕らの従者になるということですね?」


 ステファン先生は爆笑してしまった。


「あははは! 笑わせるなあああ!! お前らがSに…… Sクラスに勝つだと? そんな事は絶対にありえない。そんな時はSクラスが従者だけなく、そこの出来損ない教師以外は陛下の前で裸踊りしてやるよ!」


「本当ですね?」


「あぁ! その代わりに負けたら、特にお前は今後3年間俺に絶対服従だ。靴の裏を舐めろって言ったら舐めてもらうからな! 退学はゆるさん3年間いじめ抜いてやる。お前ら知らないかも知れないが、毎回対抗戦は学園外の人も見学に来て対抗戦自体で賭けが行われるんだが、Sクラスが相手の場合にSクラスが負けに賭けるのはBクラスくらいからだな。それでも超大穴で賭けるやつは殆どおらんが。毎年Sクラス対Fクラスが最初の試合の恒例なのは、どうせ勝つクラスと負けるクラスがはっきりしているから消化試合として組んでるだけで、本来はFクラスなんぞ試合に出すだけ無駄なんだがお客さんも今年はFクラスがどのくらいの時間耐えられれるかを楽しみにしてるから出すんだ。今までのSクラス対Fクラスの最短は始まって1秒で最長で10年ほど前に5分耐えたクラスがいたな。まっせいぜい3分くらいは持ってくれよ。最近は1分以内の降参ばかりで掛けのオッズも低くて面白くないからな!」


「わかりました。せいぜい足掻いてみせますよ」


「ふん! それから魔法の練習場は寮の裏の旧練習場しか使えないからな。向こうは落ちこぼれのお前ら以外の練習でスケジュールが一杯なんだよ。障壁の魔石もお前らなら無くても大丈夫だろうからあっちの練習場で十分だろ? その代わりお前らだけの貸し切りでいつでも使えるから思う存分練習してくれ」


「ステファン先生それはあんまりではないですか?」


 ナタリー先生が抗議をするがステファン先生は一瞥をくれただけ教室のドアの方へ歩いていきドアを出る直前で振り返った。


「出来損ない教師が文句言うな! 魔法障壁のいるような魔法を使えるようになってから文句は言え」


 それだけ言い放つとさっさと出ていってしまった。

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