第9話 いちばんにきみにあいたいよ
平等に与えられている時間。
その決められた時間の中で、貴方の傍に長くいられるように。
今日も相変わらず、彼は暇を持て余していた。午後からなんて食事を取って以降ここにきてずっとぼんやりしている。
「花羽は学校、となれば俺は単なる暇人なわけだ」
ナレーションの様にひとり呟くと、さわさわと公園の木々が風に揺れてその声を何処かに飛ばしてしまった。
仕事はとり合えず順調で、そのおかげもあってかこうやって休みが貰えるわけだけれど。
去年まではこんなにも余裕のありすぎる環境はなく、まさに地獄絵図だったことを少しばかり思い出した。
膝に肘を置いて気だるそうに、頬杖をつき子どもたちの様子に目をやる。
もう五時になろうかというのに子どもたちは帰る気配がない。未だに、走り回るか数人でゲームの通信をやっている。
「(元気だねー、ホント)」
はしゃぎまわる子どもたちの様子を公園の端にあるベンチで見ていた彼は、突然影ができたことに驚いた。
いつの間にか沈んでいた顔を上げると、そこには花羽が立っていた。息を切らし大きく肩を上下させた彼女の頬は赤らんでいた。
「どうした? 息なんて切らして」
彼は優しく微笑んで、首をかしげた。間抜けな顔でずっと居るわけにはいかない。
それに、息まで切らして……用事でもあったんだろうかと心配になる。
そんな彼の仕種にか、嬉しそうに、恥ずかしそうに、呼吸を整えながらも彼女はやっぱり笑う。ほっとしたような、嬉しそうな表情で。
「えへへ、走って帰ってきちゃいました、朋樹……さん、に早く会いたくて」
【いちばんにきみにあいたいよ】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます