聖体パンク

今回のお題「聖体パン」を題材にした短編を1時間以内に書く。


_ _ _


男はパンを手に取って「これは私の肉である」と言われた。

これにより、聖別されたパンを救世主の肉であるとして『聖体』と呼ぶようになった。


『聖体』は彼の肉である。

男は死に、その3日後に生き返った。

奇跡である。


奇跡がレアケースとしての奇跡でなくコモンケースとしての法則となった時、

人類は新たなテクノロジーの種火を手に入れた。


聖体パンクの始まりである。



* * *


始めに世界から飢えが無くなった。

3日目のことである。


聖別されたパンが、食された3日後に復活したのだ。

パンを食べてもまたパンが生まれるので信徒は飢えなくなった。


信徒でないものは聖別されたパンを得られずにどうなったか?

どうもならない。

ただ敬虔な信徒が「余らせた」食料が回ってくるようになり、

やはり彼らも飢えることが無くなった。

これをもって、清貧を旨とする派閥の信徒は聖体パンのみを食べるのが美徳とされるようになった。


* * *


3カ月目のことである。

死者が蘇った。

人間は食べたものによって体が作られる。

聖体パンのみを食べるものの体は聖体パンによって形作られ、

ゆえに聖体パンを食し続けた信徒の体は死後3日目にリポップした。


奇跡の零落に混乱が起きた。


* * *


3年目の事である。

人びとは慣れた。

死後3日目にリポップするものがいる生活が当たり前となった。

人口は増え食料問題が…

食糧問題も起こらないので生活圏の奪い合いが起こり始め、

人びとの間に争いが生まれた。


* * *


300年目のことである。

リポップ時に生じる空間のゆがみを利用し、タービンを回しエネルギー動力とする聖体兵器の運用により戦禍は拡大する。

そして多くの人が死に…3日経つとリポップした。


世界は少しの平穏と、その後3日間隔で起きるカタストロフィとを繰り返すようになった。


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