第130話 しふくの時と言われても17


 暫く話をした後、我が家へと移動する運びとなった。


 今回はベルの不思議パワーを借りて俺達が我が家へと移動する所を目撃されないようにしてもらってから車で我が家まで移動している。


 何がどういう原理でそういう事をやっているのかは分からないが、張り込んでいる記者や一般の方達からバレないように移動をしたりするのはどうすれば良いかベルに相談したらベルが任せてくださいと言ったので任せている。


「本当に大丈夫なのか?普通に移動してるけど……」


「はいマスター!大丈夫ですよ!こう見えてベルは万能ですから!」


「マスター?……兄さん、そういう趣味があったの?」


「……とりあえず、家に着いてから説明する」


「……分かったわ」


 妹に変な奴だと思われる事がこんなに恥ずかしい事だとは思ってもみなかった。


 微妙な空気の車内で千尋は運転、助手席は純、後部座席には美奈、俺、ベルの順で座っていて迂闊な事を言うのが怖くて沈黙してしまう。


 そんなこんなで我が家へと到着。


 ここまでくればもう大丈夫だと思い、美奈に鑑定を掛ける。


 身内を警戒しないといけないのは何とも言えない微妙な気分だった、信用していない訳では無いが何が起こるか分からない状態だったので予め何かアクションを起こすのは家に着いてからという取り決めだったので仕方が無い事ではある。



「ただいま……お父さんとお母さんに会ってくるね」


「おう!」


 仏間に向かう美奈に鑑定を掛けて俺は驚愕しながら居間で待機。


「まじか……」


 両親に線香を上げていた美奈が居間へと戻ってきて、メイド服を着ている英美里を二度見しながらもスルーして席へと着いてくれた、我が妹ながら空気が読める良い妹だと思う。


「美奈、お前今まで加護持ちの人とか周りに居たか?」


「……ここ2カ月ぐらいは会う人も限られてたから、その人達が加護持ちじゃなかったら居ないと思うけど」


「自分でステータスって見た事あるか?」


「無い。そもそもステータスってどうやって見るの?」


「なるほど……」


 未だステータスという概念は一般的に広まっていないのが現状だ、自分で自分のステータスを見るには加護を持っていて自分に鑑定掛ける以外の方法は今の所無いので仕方が無いといえば仕方が無い。


「とにかく、俺と我が家の説明をしてからだな……」


 居間で英美里が入れてくれたコーヒーを片手に世界が変わってから今まで俺が何をしてきたかを美奈に説明していった。



 ☆ ☆ ☆



「ベルさんと英美里さんの他にもまだまだ沢山の女の人がここには居るんだね……他の事も勿論驚いたけど、一番驚いたというか、引いたのはそこかな。正直兄さんが加護を持っていて、何かしら私にも言えないような秘密があるのは分かってたけど、まさかここまで大きな事だとは思って無かったから、驚いてる。それと怠惰だっけ、かなり扱い辛そうなスキルだし娯楽神の加護、ダンジョン攻略者、ベルさん、怠惰ダンジョン、これらが上手い事噛み合って無かったらと思うとぞっとするね……何か一つでも要素が掛けてたら今頃どっかの施設で隔離されて研究でもされてたんじゃない?」


 美奈の言う事ももっともだし、俺自身運が良かったと思ってる。


「案外冷静だな……」


「驚きすぎて逆に落ち着いてるって感じかも。それより、千尋さんと純さんは良くこんな人と一緒になろうと思いましたね……はっきり言ってクズだし、夢も希望も持たない諦め人間だし」


「まぁそれが惚れた弱みというやつだよ……」


「むしろそこが良いんだよ!可愛いし、面白いよ拓美君は!足掻いて打ちのめされて倒れ込んだと思ったら立ち上がらずに匍匐前進で前に進んで行くような人はあんまり居ないからね!普通はまず起き上がろうとするのにね!」


 散々な言われようだが、否定も出来ないのでだんまりを決め込むしかない。


「本当に、ありがとうございます。本来妹である私が兄さんの世話をしないといけない所を皆さんがお世話してくれて感謝しかありません。こんな不出来な兄ですが、今後ともよろしくお願い致します」


 美奈に合わせて俺も頭を下げる。


「とりあえず!説明も終わったので、まずは美奈に念話と隠蔽の付与をしちゃいますね!付与が終わったら、とりあえずレベリングの為に地下広場に行きましょう!」


 空気を読まずに話を先に進めてくれるベルの存在がとても頼もしい。



 ☆ ☆ ☆



 地下広場に行って、美奈の初めてのレベリングを行った。


 今や魔法銃という便利な物があるので、低レベルの美奈でも簡単かつ効率的にレベリングが出来た。


 夕食までたっぷり魔法銃をぶっ放した美奈は魔法銃が気に入ったようで、自分用にカスタムした魔法銃が欲しくなったのか、ベルに頼み込んでいた。


 美奈の紹介は明日に回すとして、夕食後に美奈のスキルについて本人に説明する。


「ご飯とても美味しかったです、ありがとうございました、ごちそうさまでした」


「御粗末様でした!コーヒーを入れて来ますね!」


 英美里がコーヒーを入れてくれるの待ってから、美奈に説明を始める。


「美奈、俺はもっと早くにお前をこっちに呼ぶべきだった、すまなかった!お前のスキルはヤバイ……今まで無事で居てくれて良かったよ」


「スキル?……スキル……そういえば大分前に色欲がどうとかって……あれは本当の事だったって事?」


「知ってたのか……使った事はあるか?」


「無い。というか今の今まで忘れてた……何かの間違いというか、良く分かんなかったからスルーしてた」


「とりあえず今分かってる美奈のステータスを伝えるけど、明日から詳細な効果を調べて欲しい。俺達も色々と手伝うから」


「分かった」




 児玉 美奈 


 スキル 不退転/幸運/色欲/念話/隠蔽



・不退転 精神力上昇


・幸運 運気上昇



<色欲>

・色欲の解放(対象の色欲を解放させる事が出来る)

・色欲の誘惑(対象の思考を誘導する事が出来る)

・色欲の幻惑(対象に幻を見せる事が出来る)

・色欲の刻印(対象に刻印を刻み、対象の能力の一部を自身に付与出来る)

・色欲の絶倫(自身の色欲が満たされている場合、経験値、SPを得られる)

・色欲の魔眼(自身に色欲を抱いている者を石化させる事が出来る)





「ヤバイだろ?」


「ヤバイね……」


 児玉家の血筋は何か呪われているのだろうか。


 兄妹揃って大罪スキル保持者というのは流石に血の呪いのような因縁を感じざるを得ない。


 というか妹が色欲というスキルを持っているという事が兄としてどういう顔をするのが正解なのか分からくて困る。
























「色欲……実は私って結構エロイのかな?」


「いや、知らんけど」


「兄さんが書いてくれたメモを見る限り、かなり便利そうではあるけど……色欲を満たされている場合の詳細な条件が気になる所だよね……ちなみにレベリングする前の私のレベルって幾つだった?」


「……9」


「今日まで大体8週間で週一ペースで1上がってる……そっか、そんな事で条件満たせるのか……これからは毎日すれば良いだけね。ありがとう兄さん」


「おぅ……」


「明日から楽しくなりそう……私、こっちに戻って暮らす事にするね」


「おぉ!」






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