第14話 世界が変わっても人間そんなに変わらない1


 朝日を浴びて目が覚める。

「おはようございます、ご主人様!」

「おはようございます……」

「……うぉ!近い!近い!」

 無意識に返事を返す、数秒経ち段々と意識が覚醒していく、視界に入った英美里の顔が自分の顔の近くにあることに気付いて布団から飛び起きる。

「あまり睡眠を取られていないようですが大丈夫ですか?」

「あ、あぁいつもの事だから……それで英美里は何故俺の部屋に?」

「はい、勝手ながら朝食を作りましたのでお呼びに参りました」

「あぁ、そういうことか、ありがとう……もう少ししたら食べに行くよ、起きたばかりでまだ食欲が無いんだ……」

「では、居間でお待ちしております」

 そう言って部屋から出る英美里を見送る。

 起きてからお腹がすくまでの暇な時間にステータスを確認しようとステータス画面を開く。


児玉 拓美 LV6


 スキル 怠惰/ダンジョン用アバター作成/アバター操作 


 加護 娯楽神の加護


 G-SHOP



「レベルが3つも上がってる……ってことは何かスキルが取れるかも……」

 昨日見た時よりも3つ上がっているレベルを見て、何か新しいスキルがあるかもしれないとG-SHOPを開く。


 G-SHOP


 残SP16000


 スキル

 加護

 ダンジョン

 アバター


「ん?アバターの項目増えてる……とりあえず見てみよう!」

 昨日は無かった<アバター>の項目を見つけ、興奮気味に<アバター>の項目を開く。


<アバター>

 アバター修復 消費SP1000

 発声機能 消費SP10000

 味覚機能 消費SP10000

 聴覚強化 消費SP15000

 視覚強化 消費SP15000

 触覚強化 消費SP15000

 嗅覚強化 消費SP15000

 身体能力強化 消費SP15000

 身体能力同調 消費SP15000

 

「これは……アバターの修復とアバターに機能を追加したりアバター自体を強化出来るってことで良いんだよな?」

 修復、機能追加、強化、今ある項目を区分するならこんな感じかなと、勝手に区分してどうしようかと悩む。

「うーん……とりあえずは発声機能でいいか?……いや待てよ……その前にスキルとか見といた方がいいよな、なにか有用なスキルあるかもしれないし……」

 アバターよりもまずは、自身のスキルを優先しようとスキルを開くが追加されていたスキルは何も無かった。

「駄目か……取得条件を満たしていないって事だよなぁ……じゃあしょうがないよね!発声機能追加!」

 取得出来るスキルが無かった為、これはしょうがないと自分に言い聞かせながら嬉々として<発声機能>を追加した。

 

「早速試してみよう!」

 朝食の事等忘れ、アバターを取り出し操作を始める。

「「あーあーあーこれどっちも喋ってんな!」」

 追加した発声機能を試すも本体からもアバターからも声が聞こえてくる、これでは良くないとどちらか一方が喋るように練習を始めた。

 練習を始めて10分程で意識している方だけが喋れるようになったので、アバターのまま英美里に喋りかけてみようと部屋を出る。

 居間に行くと台所で何か作業をしている英美里を見つけ声をかける。

「英美里、なにしてるの?」

「まぁ、アバターのまま会話が出来るようになったのですね!おめでとうございますご主人様!」

「そうなんだよ!でも、良くアバターだって分かったね」

 アバターだと一瞬で見抜かれ、多少の驚きはあったものの見分けた理由が気になり質問する。

「一番大きな理由は気配と魔力量ですかね、後はなんとなくご主人様では無いと分かるとしか」

「気配と魔力量?そんなに違うの?」

「はい、気配も魔力もご主人様よりも少なく感じますね」

「へぇそうなんだ……てか俺にも魔力あるの?」

「はい、勿論です生命である限り多かれ少なかれ魔力は持っているものですから……厳密にはアバターは生命ではないですが」

 その後も気になる事を何度か質問し、英美里の把握している事について教えて貰った。

 

「なるほど……」

 

 英美里によればアバターは俺よりも気配も魔力量も少ないらしい、恐らくアバターの能力が俺のレベルが1だった時の状態だからだろうと言っていた、恐らく身体能力も据え置きだろうとも。

 そしてアバターは限りなく生命に近い存在らしいが、生命と大きく異なるものがあるという、それは自我や魂とでも呼ぶべき存在の有無、詳しくは分からないがこの有無が普通の生命とは異なる大きな事だと。


「そろそろお腹も空いてきたし朝ごはん食べても良いかな?」

「はい、温め直しますので少しお待ちください」

 アバターの操作を辞め部屋から居間へ歩いて行く。

 居間でアバターを回収してから英美里にありがとうと伝えてから席に着く。

 暫くして英美里が朝食を机に並べ出すが一人前しかない。

「英美里は食べないの?」

「私はご主人様が食べ終わってから頂こうかと……」

 遠慮がちにこちらを見てくる英美里を見て、寂しさを覚える。

「いや、折角一緒にいるんだから一緒に食べようよ!」

「はい!ありがとうございます!ではご一緒させて頂きます!」

 英美里から待ってましたと言わんばかりに大きくとても良い返事が返ってきて、テキパキと自分の分も机の上に並べてから席に着き、こちらの号令を待つように見つめてくる。

「じゃ、じゃぁ……いただきます」

 机の上に並べられた料理に目をやる、ふわふわなスクランブルエッグに小さめのオムレツ、カリカリに焼かれたベーコンと綺麗な焼き目の付いたソーセージ、レタスとオニオンとプチトマトのサラダ、味噌汁と沢庵そしてつやつや炊き立てほかほかな白米、一人で暮らしていた時には考えられない程の完成度と種類の多さに朝からテンションは爆上がりになる。

「まるでホテルの朝食みたいだな!」

「いっぱい食べてくださいね!」


 ☆ ☆ ☆


「ごちそうさまでした!とてもおいしかったよ!美味しすぎて少し食べ過ぎちゃったよ!」

「ありがとうございます、そう言って頂けると作り甲斐がありますね!」

 言うやいなやテキパキと英美里が食べ終わった食器を片付け始める。

「俺も手伝うよ」

「いえ、これは私の役目ですから!ご主人様はゆっくりなさって居てください!食後のコーヒーを入れますね!」

 英美里の只ならぬ圧力にたじろぐも何とか返事を返す。

「あ、あぁ、ありがとう」



 食後のコーヒーをちびちびと飲みながら、ベルに念話する。

『ベルー!』

『オハヨウゴザイマスマスター、朝食は美味しかったですか?』

 棒読み攻撃をしてくるベルに機嫌悪そうだなと思いながらも返事を返す。

『ど、どうした?寝起きか?』

『いえ、なんでもありません……それよりもどうされたんです?』

『いや、別にこれと言って用事は無いんだが……元気かなと思って』

『はい!マスター!ベルはいつでも元気ですよ!』

 機嫌の直ったベルが元気良く返事を返してくれる。

『そういえば、アバターに新機能が追加されたから、お披露目がてらアバターで今からそっちに行くよ』

『はい!マスター!待ってますね!』

『あぁ、コーヒー飲み終わったらすぐ行くから!』

『…………エミリの入れたコーヒーですか?』

『あぁ!そうなんだよ!朝食も作ってくれてね!まぁすぐ行くからまたね!』

 ベルとの念話を終えコーヒーを飲みほして、英美里にベルの所に行くと告げると、一緒に行くと言うので英美里の片付けを待ってから一緒に家を出ることにした。



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