第13話 忍び寄る魔の影
「サラー?」
ルミナは不安げにサラを見ていたが、サラはビクリともしないー
緑の渦は益々強くなり、二人を飲み込んだー。触手は、ミリミリ音を立てヒビが入っていく。
「ーサラ?」
ルミナは不安げに再び声を掛けるがら応答はないー。
サラは、身体をくの字にしてがっくりしている。
すると、とてつもなく強い突風が周囲を覆い尽くしたー。
ガタガタと強い地震とと地崩れが遅いかかり、アスファルトがぱっくり割れ、その中から上半身は女、下半身は茨の蔦の様な姿をしたダークネスが出現したのだ。緑の渦は益々強くなり、ルミナは再び目を覆ったー。
「こいつ・・・召喚されたのかー?何処から湧いて出たー?」
少女は、触手をダークネス向けて巻でけようとしたが、ダークネスは茨の
少女は再び触手をくねらせ、ダークネスに襲いかかるも、ダークネスの発する強い突風が少女を取り囲み、少女は強い悲鳴を上げたー。
すると、サラはその場に倒れこんだ。すると強い突風が徐々に弱まり、ダークネスはピタリと動きを止め、自身が出てきたアスファルトの割れ目の中に姿を沈めた。
アスファルトには、頭部だけの少女がそこにいたー。
「ごめんなさい。ごめんなさい。私、お腹ペコペコで、幾ら食べても満たされないの。気が付いたらこうなってたの。ねぇ、どうして?」
少女は泣きじゃくる。
「慈悲を求めても無駄だよ。私の仕事はあんたを狩ることなんだからな。」
ルミナは、ゆっくり少女ち近づく。すると、触手になった髪がルミナの両腕両足を巻き付いた。
「ねぇ。お姉さん、こっち来てよー。」
さっきまで泣きじゃくっていたはずの少女はうって変わり、にんまりほくそ笑む。
ルミナは、力を入れると触手を思い切り引っ張る。触手はミリミリ亀裂を立て、散り散りになった。
そして大太刀を構えると、少女の頭部を真っ二つに切り裂いた。赤黒い血が迸り、遺体はみるみる腐敗し蒸発していった。
フィールドはドロドロに溶け、鮮やかな田畑が出現した。
途中から、ルミナは違和感を感じていたー。既視感の様な強い重苦しい何かに見られている様な感覚を感じたー。時折、動きを停止させる、少女のダークネスー。いとも簡単に振りほどく事の出来た触手ー。その気配はエリアムの物とは違い、とてつもなく強力な魔の力であるー。
ルミナはサラを抱えると車の後部座席に乗せた。
すると、後方からエリアムが銃を携え、歩いてくる姿があった。
「いつからいたんだよ?」
ルミナはエリアムを軽く睨み付けた。
「10分位前だが・・・」
エリアムは真顔で、10メートル後方の白い車を指さした。
「ーこの前はすまなかった。」
「ああ、別にいいよ。あの時あんたが止めてくれなきゃ、私は今頃、化け物になっていたところだよ。あんたが怒る気持ちは分かるよー。」
ルミナは軽く溜め息をついたー。
「それならもう、いいんだ。」
エリアムは、低い声で話す。
「ずっと、どこ行ってたんだよ?」
「ーそこら辺をぐるぐる迷っていたー。奴のフィールドを見つけてに入るのには苦労したがー。」
エリアムは軽く髪をかきあげた。
「まさか、ずっと見ていたのか?」
「ああ。侵入する際からずっと、奴のオーラの流れを遮断して、うまくお前達を誘導したのだがー。」
「いやらしいな。」
「時間を止めていたんだ。それに、これで、お前のダークネス化が解消されるかもしれないし。」
エリアムは淡々と話す。二人は車に腰掛け、ガードレールの向こうの山々を眺めていたー。夕焼けが山々を照らしだし、景色を鮮やかに美しく彩っているー。
「あんたも薄々、感づいていたんじゃないのか?組織の内部にダークネスが何体か、潜んでいるってことにー」
「ーまあなー。アイツら嘘臭いしー。」
「なぁ、お前の例の計画は、上手くいくのかー?」
「かなり危険な賭けだが、やるしかないだろー。」
ルミナは生まれてきてこの方、自分はずっと異質な存在だということに思い悩まされた。
まだ研修生時代だった、本当の思春期の少女だった頃ー、施設を抜け出して、普通に人間の男と付き合ったことがあったが、彼と自身との間には大きな隔たりがあった。相手の男はごく普通の人間の男だったが、自分との間に明らかな隔たりを感じたー。彼は光側の人間だった。普通に友達も沢山いて、普通に皆から好かれている。同じ景色を見ている筈なのに、180 度違う景色を見ていた。向こうは虹色の眩しい世界の中で生きていた。自分は、ドブ鼠のようであった。
そんなとある朝、男と寝ていた頃、地面から黒い巨大影が出現し、口をぱっくり開けると男を呑み込んだ。唐突な事なので、何か何だか状況が理解できずにいた。
それからというものの、自身の身に大きなピンチがある度に、決まって何者かが、守ってくれている様な感じに囚われたー。
それは昼間の太陽がさんさんと照りつけている時刻ではなく、曇りや雨の日、夕暮れから暗い時刻に必ず起こるー。
今回の件で、ある程度確証が取れたー。
「ーなあ、今更あんたに話すけど、昔からずっと私の事をつけ回している奴が居るみたいなんだ。」
ルミナはライターを取り出すと、タバコに火を灯した。
「ーどういう意味だー?」
「今まで、何故か思い当たる節があるんだ。戦いの時、ダークネスが出現した時、他の仲間は重症になる事が多く、仕舞いには亡くなった者だって居たのにー私だけ軽傷で済んだりする事が多くてー。特に、スキルを発動もしてないどころか、何も戦ってもいない時とかもあってなー。私がピンチの時は強力な何者かに守られているような気がするんだよな。」
ルミナは煙を吐き出すと、夕焼け空をぼんやり眺めていた。
「それは仲間か?誰か、心当たりは居ないのかい?」
エリアムもタバコを咥え、ルミナから火をもらう。
「いいや、仲間じゃないと思う。彼女達の発動する
ルミナの身体全身の痣が、ジリジリ傷んできた。そしてそれは熱を帯びるような感覚になっていった。
「その、奴って、僕は、メリーの事だと思うのだがー」
「いいや、メリーのオーラとも違うんだ。ー組織の奴らとも違うー。何かー、重苦しくて重圧感があるんだ。」
ルミナは上着の袖を強く握りしめた。
「他のダークネスかー。僕が昔出会ったダークネスは、タイプが真逆そうだから、違うだろうしなぁー。」
エリアムは顎に指を当てて、眉を八の字に寄せた。
とある廃墟の一角で、ドールの一団が行進をして、数千の群れをけいしていた。ドールは皆、同じ様な姿をしており、首から上は狼の様な姿をしており、直立二足歩行をしていた。ザーザー雨が滝の様に地面に打ちつけ跳ね返している。
時刻は既に夜の12時を回っていた。すると、人気のない静かな廃墟の奥から、カツカツとヒールの音が反響した。深紅のシルクハットと深紅のトレンチコートー。右手にはステッキを携え、上質な白い手袋をしている女が姿を現した。
「大分、涼しくなったわね。ついでに塵共も利用して消し去ったら、もうこれで楽だわー。」
柔らかな色っぽい声である。女は不気味にほくそ笑むー。彼女は傘をしてないのに、何故か全く濡れてはいなかったのである。
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