02 あなたがいなくなってから

第12話

 都会の駅前。連絡を待ちながら、新幹線も待つ。近くにいる若者の雑談。聞こえてくる。


「なあ。あのアーティスト。新曲出したんだっけ?」


「曲?」


「ほら。この前まで流行ってた、岬途架みさきみちかってアーティスト。喋れない歌手のやつ」


「あ。ああ。いたなあ、そんなのも」


「もうなんか、旬が過ぎたっていうか」


「飽きが来たな」


「うん」


「バラエティとかにも出ないし、ただ歌ってるだけじゃん。そういう、私は歌手しかやりませんっていうのもなんか、はなにつくんだよな」


「わかるわかる。まあ、最近はヒットチャートにも出てきてないし、干されたんじゃね?」


 そんな感じの会話だった。


『よお。お待たせ』


 通信が来た。


『ようやく、できたぜ。これでお前も一人前だな』


「なんですか、一人前って」


『戸籍を新しくしてからが、正義の味方の本番だ』


「一回死んだだけで、おおげさですよ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る