第17話 たまらないわけ
回想しています。
こころの病が発症した頃、私は名前も顔もわからない誰かに恋をしてました。
思い起こせば私は以前あることを自分にしていました。
そうです、大失恋をしてしまい彼のことをこころの底に閉じ込めたのです。
きっかけはどうであれ私は精神科のドクターのお世話になってしまいました。
押さえていた感情が溢れだした、という表現がぴったりきます。
失恋したことすら忘れてました。ただただ誰かもわからずに好きな誰かが確かに存在していました。わかるのはそれだけです。
自分でもおかしいくらいふわふわと漂う根なし草のようでした。
当時の私はこれから続いて行く長い長い闘病生活のことなどつゆほども思っていませんでした。
直ぐに治る、無邪気な願いを信じていました。
病気をさっさっと受け入れてもう少し自分を知ることに前向きでいたのなら、と今さらながらに思いますが、後の祭りとはこのことです。
逃げていました。現実逃避です。
ただ誰にかもわからず恋をしていたのは確かなようでした。
根なし草でも苦しみはありました。
どんな状況においても人として日常茶飯事のモロモロな出来事はしなくてはなりません。なかなか大変でした。
そんな中ドクターや看護婦さん、心理の方、ワーカーさんたちがいてくれたのは大きな救いでした。もちろん同じ病を背負う仲間たちもいました。
色んな人たちの支えもあり、どうにかこうにか生きていました。
でも空回りも多い二十代だったように思います。
本当に本当に反芻しながら毎度毎度叫びたくなるような恥ずかしさがフラッシュバックします。
あぁでも仕方ない。私は当時の自分を大きな気持ちで受け入れて、次の場所へと向かっていくことをノルマとして考えたい。
前進あるのみ。
これからも闘病の話は外せないかな。
こころの病は私の大事な人生の大部分であり、そのものをなくしては語ることが出来ないとも思うから。
少しずつ少しずつ記憶をたどりたいと思います。
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