虐げられた令嬢のざまぁ日記

リオール

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8月9日


 今日は新しい母と妹が出来た。お母様が亡くなってからまだ一ヶ月だというのに、もう愛人を正妻とするなんて……父には開いた口が塞がらない。


 二人は明らかに私を邪魔者扱いしている。

 紹介された時からビシビシ感じる敵意は痛いくらいだ。そんなに必死にならずとも、私は貴女方の事などどうでもいいのですが……。




8月12日


 どうにも義妹の敵意ある行動が止まらない。


 父の愛は自分にしかない、所詮お前は形だけの元正妻の娘。体裁を保つだけのために作った娘だ。

 これからは自分こそがこの侯爵家の正当なる娘で有り、私は要らない子──とは義妹の言い分だ。


 義妹とは言ってもほんの一カ月ほどしか違わない。が、ちょっとオツムが幼いと言うか残念なようだ。


 義妹のあのピンク頭は見ていてチカチカする。茶髪の父は勿論のこと、義母も普通の黒髪で、どこからあの色が出てきたのか不思議でならない。

 義母は愛人でありながら不貞を働いたのでは?と一瞬思ったが、ピンク頭の瞳の色は父と同じ青緑。残念ながら珍しい色なので、間違いなく父の子だ。あの頭は突然変異なのだろう。


 珍種か。




8月16日


 食事は私だけ自室で食べるように言われた。なぜ?


 どうやら私が睨んで怖いと、義妹が父に言ったらしい。睨んできたのはお前の方だろう……とは思ったが、私としても折角の食事が不味くなるので、別々に食べる方が良い。有難くその進言を受け入れた。


 ずっと寡黙で無表情の父と、会話のない食事だったのだ。自室で気楽に頂く夕食は、久方ぶりに美味しく感じた。




8月19日


 さあ寝ようとベッドに入ろうとしたところで、父に呼び出された。嫌な予感しかない。


 案の定、私への苦言だった。

 何でも、義妹が私に暴言と暴力をふるわれたと言ってるらしい。

 夕食後、蔵書室で本を読み、その後は入浴、自室で読書……をしていた私のどこにそんな暇が?


 が、父は私の言葉には耳を傾けること無く、義妹を虐めるなと叱られた。

 寡黙で感情死んでるのかと思ってた父。あんな風に声を荒げることが出来たんだなあと、どうでもいい話を聞き流しながら思った。


 ああ、今日は本当に疲れた。

 完全なる他人の義母に、半分血が繋がってるとは思えない義妹。


 あの人達とこれからずっと共に過ごさねばならないなんて、ゾッとする。


 私はまだ幼くて──14才の身では、どうしようもない。


 けれど、今から今後の対策を練る必要があるようだ。


 馬鹿を相手にするというのは本当に大変なのだと、勉強させられた一日だった。



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