第62話 ✳︎自己嫌悪
「う、うぅぅぅぅぅ!!」
私は泣きながらショッピングモールを出て、近くの公園のトイレへと逃げた。
すぐに個室に入って息を整えて、手鏡を見る。
涙と汗で顔は濡れ、髪の毛は何本も顔に張りついていた。
「は、はは……ひっどい顔」
私はその場で膝を抱えて丸くなる。
あぁ……やっちゃった。 泉とお姉ちゃんには心配かけちゃった。
逃げることなかったのに。 話聞けば良かったのに。
私は自己嫌悪に陥る。 2人はなにも悪くない。
悪いのは勝手に悪い方に考えて、凹んでいる自分だ。
『戻って謝れば良いのに』。
そんなことが頭によぎるが、気持ちと身体が動かない。
とにかく今は2人に会いたくなかった。
なにを言われるか分からないし、なにを言えば良いのか分からない。
そんな状況に陥っている自分にまた気づき、自己嫌悪。
「…………最悪だ」
来週は楽しい楽しいライブ旅行だったのに、全部1人で壊してしまった。
どうしようもないバカだな、私……。
〜〜♪〜〜♪
「ん?」
もう出ないと思っていた涙がまた目から出はじめた頃、カバンの中にあるスマホから着信音が流れてきた。
私はいそいそとカバンからスマホを取り出す。
表示されているのは『片桐 奈々』という文字だった。
「……も、もしもーーーーーーーー」
『あかりん今どこにいるの!?』
「え、えっとね○○公園のトイレの中ーーーーーーーー」
『分かった! 今からチャリ漕いで全力でそっちに行くから! 良い!? そこからいっっっぽも動かないでよ!!』
「えっ!? ええっ!?」
『じゃあ、そういうことで電話切るわ!!』
「ちょっ! ちょっとーーーー!!」
私がどういうことか聞く前に、ななちんはブチっと電話を切る。
私の耳に聞こえてくるのはツーツーという不通音だった。
「な、なんだったの……??」
まるで嵐みたいだ。
急にきて、自分の言いたいこと、やりたいことを言って急に去っていく。
こんなななちんは初めてだ。
「ってか、なに人に対して嵐見たいとか思ってるんだろう?」
お姉ちゃんと泉にとっては、さっきの私も嵐みたいだったんだろうなぁ。
自分の言いたいこと、やりたいことは言わなかったけど。
「……とりあえず、化粧直そう」
私は立ち上がってカバンからハンカチを取り出す。
ハンカチで汚れた顔を拭いた後は個室から出て、トイレの鏡を見ながら化粧を直した。
そして、15分ぐらい経つと、外から自転車の激しいブレーキ音が聞こえてきたと思ったら、焦った様子のななちんが突入してきた。
「あかりん! 大丈夫!? 陽さんと高山からはなんとなくどんな状況になったのかは聞いたけど、とりあえず大丈夫!?」
「う、うん」
「なら良かったぁぁぁ! 2人からいつものあかりんからは考えられないぐらい、暗いオーラ醸し出してたって聞いてたから、色々最悪な想像しちゃったよ!!」
ななちんはガバっと私に抱きつき、矢継ぎ早で話し始める。
抱きついてくるななちんの身体は震えていて、心配をかけたことがよく分かった。
「ごめんななちん、心配かけて……。 でも、こんなに心配してくれてありがとう」
「本当に心配したんだから! もう! 馬鹿!」
ななちんが私の胸をポカポカとグーで叩く。
少し痛かったけど、それ以上にななちんの優しさで心が温かくなったような気がした。
「ぐすっ……。 とりあえずトイレから出て、うちになにがあったか詳しく話してよ。 うちの家で話は聞くからさ」
「で、でもーーーー」
「2人には見つけたらうちが話聞くことは伝えてるから大丈夫。 あの2人と話すにはまだ心の準備が必要でしょ?」
「……ありがとうななちん」
「でも、2人にはあかりんを見つけてうちの家で話を聞くことは伝えるから。 それぐらいは許容してね」
「うん。 分かってる。 悪いけどお願いね」
「はいよー! じゃあ、とりあえずトイレから出て、家に向かおうか。 そろそろ本格的に夜になっちゃうよ」
私はななちんの後をついてトイレから出る。
そこからは2人でななちんの家へと向かったのだった。
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