第28話 王子様ですが脈ありでしょうか?


竹中「さっきから黙って聞いてりゃ、調子に乗りやがって、いい気になるなよ?」


私は、すかさず竹中の懐に入り鳩尾にパンチを入れた。しかし、手応えがない。

なんで、こんなに体が硬いの?


竹中「ぐっ......向日葵ちゃんのか弱いパンチなんてきかねぇよ!」


反撃の拳を上手くいなす。

私は、少し距離を取って考える。

あの感触、初めてだ。

そんなに鍛えてるように見えないけど、私のパンチが効かないなんて。

仕方ない、パンチが効かないなら、違う手で行こう。


竹中「なにボサッとしてんだよ!」


竹中が、私に向かって大振りの右ストレートを打ってきた。

練習通りにすればいける。

彼の右ストレートを避け、右腕を掴み、コンクリートに向かって思いっきり背負い投げをする。

彼の巨体が持ち上がり、コンクリートに打ち付けられる。

油断するな、まだ立ち上がるかもしれない。

私は、即座に彼の右腕と頭を持って、袈裟固めの体勢に入る。


向日葵「ぐっ......落ちろ!」


竹中「がはっ!はぁ、はぁ、調子に乗るなよ」


竹中は、私を睨みながら、袈裟固めを解こうと全身に力を入れている。

なんて、力なの。

締めるどころか、抑え込むだけで精一杯だ。

すると急に、胸に悪寒が走る。


向日葵「きゃあ!!」


竹中に、もう片方の手で胸を揉まれたみたいだ。

気持ち悪くて、思わず離してしまった。


竹中「いい胸してんじゃん、もう一回触っちゃおうかな?」


向日葵「......ゴミが」


どうしよう、さっきの袈裟固めで結構力を使ってしまった。竹中は、少し疲れている程度。


竹中「向日葵ちゃん、さっきので結構疲れたみたいだね?息が切れてるぜ?」


向日葵「......」


竹中「だんまりか......じゃあこっちから行くよ」


竹中が、襲いかかってくる。

またさっきと同じ大振りの右ストレート。

それは、効かない。

さっきと同じで避け、右腕を掴む。


向日葵「ぎゃあ!!」


竹中「そんなにはしゃぐなよ?興奮するだろ?」


向日葵「糞が!」


しまった、右腕に気を取られ過ぎて、左手の事を忘れていた。左手で胸をしっかりと握りられ、彼に抱き寄せられた。


竹中「あの子みたいに抱き寄せてみたぜ、嬉しいだろ?」


向日葵「ふざけるな!」


竹中「いいのか?そんな事言って?俺がそのお前の可愛い服をビリビリに引きちぎって、また消えない思い出作ってもいいんだぜ?」


向日葵「くっ......」


竹中の指が気色悪く、ウネウネと動いている。

全身に鳥肌が立つ。


竹中「さーて、お前の育った姿を見せてくれて!」


その瞬間、竹中のポケットから電話の着信音が、響き渡る。

竹中は、眉にしわ寄せて、右腕でポケットをガサゴソとあさる。

そして取り出したケータイは、私の物だった。

画面には、『卯月 蓮華』と書かれており、電話の画面になっていた。


竹中「ったく、いつまでも俺たちの邪魔をするんだなこいつは」


竹中は、少し考えた後ニヤリと笑ってこっちを見る。


竹中「今からこの電話に出て、何もなかった程で普通に会話しろ」


向日葵「普通に?」


竹中「そう、普通に、俺に電話中何をされても普通に会話しろ」


やっぱり、こいつは正真正銘のクズだ。

ゲラゲラと笑いながら私に言ってくる。


竹中「ちなみに、拒否権はないぞ?お前のあられもない姿を写真に撮ってばら撒かれたくないならな?」


そう言って、ケータイを私に手渡すクズ。

私は、それを受け取り、ボタンを押す。


向日葵「蓮華!助けてぇ!」


竹中「お前!」


蓮華「大丈夫だ向日葵、今来た」


電話口から聞こえる筈なのに、すごくクリアに聞こえるその声の主は、竹中の顔面を殴り飛ばした。彼は、竹中の殴られた勢いで宙に舞った私をお姫様抱っこでキャッチした。


蓮華「向日葵、よく頑張ったな!後は、俺に任せろ!」


そう言って、私に笑顔を見せてくれる王子様だった。

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