第25話 可愛いですが脈ありでしょうか?


その後、紫陽花さんに先程のお返しにいっぱい可愛い服を着てもらいました。

流石に紫陽花さんも疲れたようなので、次のボーリングに向かう事にしました。

ボーリングは、見た事しかないので楽しみです。


紫陽花「......酷い目にあった」


向日葵「凄く似合ってましたよ?」


紫陽花「やめて下さい、私は普通のTシャツで十分です」


楓「まぁ近いうちに、もっと可愛い格好させるし覚悟しときなさい」


紫陽花「何を言って......まさか、またあの地獄に行くの?」


楓「天国の間違いでしょう?」


紫陽花「絶対やだ!もうあんな所には行かないよ!」


向日葵「なんの話ですか?」


紫陽花「楓ちゃんはね、毎年コミケに私を連れて行くんだよ!しかもごりっごりのコスプレさせてね!本当に恥ずかしいんだよ!」


向日葵「コミケとは、なんですか?」


楓「コミックマーケットの略、毎年夏と冬の二回開催されてて、簡単に言うと漫画の即売会なんだよ」


いつも無表情の楓さんが、生き生きとして喋っているので、すごく面白いイベントなんでしょうね。私も行ってみたいな。


楓「向日葵ちゃんも今年行ってみる?」


向日葵「是非お願いします」


紫陽花「ダメダメ!行っちゃダメだよ!」


紫陽花さんが、私に抱きついて止められました。


向日葵「なんでだめなんでしょうか?」


紫陽花「あそこはね、人の巣窟なんだよ!人の流れが出来ていて人酔いしやすいし、はぐれたりしたら合流するのも一苦労、おまけにエッチな本も普通に置かれてるから目のやり場にも困るし大変なんだよ!」


向日葵「......なるほど」


楓「慣れれば大丈夫よ」


紫陽花「いや逆に慣れたくありません!」


向日葵「つまり初心者には、あまり不向きなイベントという事でしょうか?」


紫陽花「そういう事!」


楓「一緒に行ってくれたら、紫陽花にとびっきり可愛い服きせるわよ」


向日葵「行きましょうか」


紫陽花「なんで!なんで!」


そんな話をしていたら、ボーリング場に着きました。大きい駐車場に囲まれたボーリング場で、入り口に大きな広場があります。左にボーリング場、右にゲームセンターの入り口があります。


紫陽花「じゃあボーリングしますか」


向日葵「初めてです、緊張しますね」


ボーリング場に入って、受付用紙を書き終え受付に出します。専用のシューズを受け取って、自分達の番号のレーンに向かう途中で置いてあるボールの中から自分に合うものを選びます。


紫陽花「やっぱり9ポンドかな」


楓「よくそんなの持てるわね」


紫陽花「楓ちゃんは、力ないもんね」


楓「せいぜい6が限界ね」


紫陽花「可愛いねぇ〜」


楓「頭撫でるな」


向日葵「紫陽花さん、この12って書いてあるボールが丁度いい重さでした」


私は、ボールを片手で持って紫陽花さんに見せた。やっぱり、ピンを倒すにはなるべく重いものがいいですわよね!


紫陽花「よく持てるね、楓ちゃんの倍じゃん」


楓「見るだけで脱臼しそうだわ」


向日葵「日々の鍛錬の賜物です」


ボールを決め、番号のレーンの席に着きました。

デジタル画面のスタートのボタンを押し、1ゲーム目を始めます。


紫陽花「私から行くよ!てい!」


綺麗なフォームで投げられたボールは、的確にど真ん中を少しだけ外し、ストライクでした。


紫陽花「よっしゃ!」


紫陽花さんが、喜んで思いっきりガッツポーズをする。紫陽花さんは、こちらに来て両手を私に向けている。


紫陽花「向日葵!ハイタッチ!」


向日葵「ハイタッチですか、こんな感じでしょうか?」


両手を勢いよく、紫陽花さんの手に目掛けて放ちます。バチン!と音が鳴りました。

紫陽花さんは、両手が真っ赤になって、その後床で蹲ってしまいました。


紫陽花「いったああい!!!」


向日葵「ごめんなさい!力を入れ過ぎました!」


楓「ハハハッ、今のはハイタッチって言うより、突っ張りね」


紫陽花「......笑い事じゃないよぉ、ふぅ〜ふぅ〜」


紫陽花さんは、真っ赤になった手に目掛けて息を吹きかけています。楓さんは、紫陽花さんを見てゲラゲラと笑っています。

私は、幸せです。

こんな楽しい時間を過ごせるのですから。

やっぱり、蓮華様には見抜かれていましたね。

私が、本当に求めているものは何かを。


楓「じゃあ私の番ね」


紫陽花「ストライク取れなかったら、向日葵とハイタッチね」


楓「やめて、死人が出るわ」


向日葵「ごめんなさい!今度は、ちゃんと加減しますから!」


こんな風に、友達と仲良くお喋りして、服を一緒に見て回って、遊んだりするのが楽しくて仕方ないだなんて。思わず顔が緩んでしまいます。


紫陽花「向日葵」


向日葵「なんですか?」


紫陽花「ごめん、私、向日葵のこと誤解してた」


向日葵「......いえ、私もそうでしたからお互い様です、中2の頃から私が貴方に蓮華様を取られるんじゃないかと思って、一方的に喧嘩を売っていた様なものですし、私の方がタチが悪いです」


紫陽花「そこは、気にしなくてもいいよ、あの時向日葵には、蓮華しか信じれる人がいなかったんでしょ?そりゃ取られたくないもんね」


向日葵「そう言っていただけるとありがたいです」


紫陽花「向日葵は、蓮華のどんな所が好きなの?」


向日葵「え!?どんな所がですか?」


紫陽花「そうそう、教えてよ」


向日葵「えっと、その......蓮華様の変わらない所ですね」


紫陽花「変わらない所?」


向日葵「はい、蓮華様は、中学にお会いした時と変わらずに私と接して下さいます、そして、その頃と変わらずに私のことを心配してくださいます、あんなに真っ直ぐで、あんなに強く信念を曲げない姿に、私は憧れているんです」


紫陽花「そうなんだ、素敵だね」


向日葵「紫陽花さんは、どうなんですか?」


紫陽花「ふぇ!?」


向日葵「紫陽花さんは、蓮華様のどんな所が好きなんですか?私も言ったんですから、言ってくれますよね?


紫陽花「くぅ〜中々痛い所ついてくるね、私は、そんな大した理由じゃないよ?」


向日葵「いいんです、聞かせてください!」


紫陽花「えっとね......そのね」


紫陽花さんは、ほっぺが少し赤くなっていきます。


紫陽花「......私の事を可愛いって言ってくれた所だね」


向日葵「......それだけですか?」


紫陽花「そうだよ!だから言ったじゃん大した理由じゃないって!」


向日葵「いや、意外と言うか、可愛い理由ですね」


紫陽花「可愛い理由っていうな!もう恥ずかしいなぁ!」


向日葵「もっと詳しく教えてください」


紫陽花「えっ?詳しく?」


向日葵「可愛いって言うだけなら、そこまでときめかないと思いますし、別の何かがありませんか?」


楓「向日葵ちゃん、中々勘が鋭いわね」


紫陽花「楓ちゃん!余計な事言わない!」


楓「ほら、向日葵ちゃんも詳しく言ってくれたんだから言ってもいいじゃない?」


紫陽花「......あーもー!言えばいいんでしょ!言えば!」


紫陽花さんは、恥ずかしくて私に抱きつき、私の胸に顔を埋めて隠しました。


紫陽花「中学の頃、罰ゲームでメイド服を着せられたの、その時は、髪も短かったし胸も大きくなかったから、似合ってなかったと思う」


向日葵「はい」


紫陽花「みんなからもやっぱり似合わないって言われて、凄く恥ずかしかったけど、あいつだけ、可愛いって言ってくれたの」


抱きつく力が、徐々に強くなってきました。

顔を隠してもなお、顔が赤いのがはっきり分かるくらいになってきました。


紫陽花「目をキラキラさせてさ、自信満々に言うんだよあいつは、本当に本心で可愛いって言ってるんだって思っちゃうじゃん、ずるいよ、あんな顔されて可愛いなんて言われちゃったら、好きになっちゃうじゃん」


私は、その話を聞いた瞬間、彼女に抱きつき返しました。

なんなんですか!この可愛い生き物は!

こんな子が、ライバルなんですか!

私の方が好きになっちゃいそうですよ、もう。


?「あっいたいた、久しぶり」


その昔聞いたことのある声に、ビクッとしました。

私は、恐る恐る振り返りました。


?「中学以来だな〜向日葵ちゃん」


向日葵「......久しぶりですね、竹中さん」


私は、彼を睨みつけながらそう答えました。

なんでここに、こいつがいるんですか!

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