あるいは崩壊の始まりに悪魔はハーレーに乗る

木村

始まりの挨拶



 要約するならこの話はわたしから見た世界の姿であり、わたしが産まれてから季節が一巡りするまでの物語だ。

 そう要約するならば『正しい』始まりはわたしが産まれた瞬間だろう。しかし『あの瞬間』から始めると読み手であるあなた方にこの話がうまく伝わらないと思う。なにせわたしが産まれた瞬間は様々な事象が重なり合っていて、誰かにとっての『正解』が誰かにとっての『不自由』であり、誰かにとっての『願い』が誰かにとっての『呪い』となっていて、一言で表すならば『てんやわんや』だった。だからこそ『わたし』が産まれたわけなのだが……。とにかくあの瞬間からこの物語を始めるのは得策とはいえない。

 だからこの話はわたしから見た世界の姿ではあるが、まず『わたしが産まれる前』、つまり『わたしがまだわたしになる前』から始めよう。始まりの場所は地球より『少し』離れた星、今のところ地球上の人間には観察されたことがない銀河系に位置する名もない星だ(先に『少し』と表現したのは『光年という単位で示すには少し気が滅入るぐらい遠く』だからだ)。――とにかく地球ではない星の上からこの物語は始まる。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る